山深み春とも知らぬ松の戸にたえだえかかる雪の玉水
一段と暑さが増した7月6日(木)、日本文学科では詩人の小池昌代氏をお迎えし、作家特別対談を開催しました。作家特別対談は2014年度にスタートし、年に2回、一般公開という形で開催しています。今回はその7回目となり、これまで、唯川恵氏(直木賞作家)、穂村弘氏(歌人)、中村文則氏(芥川賞作家)、角田光代氏(直木賞作家)、東山彰良氏(直木賞作家)、村田沙耶香氏(芥川賞作家)をゲストとしてお迎えしてきました。
冒頭で紹介しました歌は、後白河天皇の第3皇女にあたる式子内親王が詠んだものですが、小池先生が宮城学院女子大学の学生のために選んできてくださった歌です。特に「雪の玉水」という今ではほとんど用いることのない綺麗な言葉を学生たちにプレゼントしたいと、先生は目を輝かせながら仰いました。先生のお心遣いに感謝の気持ちで胸がいっぱいです。
別な歌にはなりますが、同じく式子内親王の歌も登場する小池先生の著書『ときめき百人一首』(河出書房新社)のお話や、和歌や古語、古典文学のお話もしてくださいました。古典へ回帰する理由は、そこに常に新しいものがあるからだそうです。非常に印象的なお話でした。日本文学科の学生は古典文学を好む学生が多いですから、特に納得する部分があったのではと思います。
小池先生はこれから詩集を出版予定ということです。一ヶ月くらい、詩の月、詩しか書かない月を設けたと教えてくださいました。
先生は絵も描かれますが、詩を書くのと絵を描くのは同じとお話しくださいました。また、歌うように、音を奏でるように、詩を作られるそうです。詩人はいるのかいないのかわからない存在だけれども、物事を受けとめる存在だということも教えてくださいましたね。
詩を書くときには、心を空っぽにして無の存在となることも必要だそうです。19世紀のアメリカに生きた詩人Emily Dickinsonの詩の中から、I’m Nobody! という詩も引用され、詩とは、詩人とは、そして小池先生はご自身の詩についてどう思われるのか、などなど多岐にわたってお話をしてくださいました。
作家特別対談は毎回様々な話題が登場しますが、この度も、既述しました式子内親王、Emily Dickinsonの他にも、宮沢賢治、斎藤茂吉、穂村弘さん、和合亮一さん、又吉直樹さん等、90分の間に色々なお名前が飛び交いました。すごい情報量だったのではないでしょうか。
一般公開の作家特別対談には、毎回遠くから足をお運びくださる方々も多く、会場となる礼拝堂は満席となります。日本文学科の学生だけでなく、あらゆる世代の方々に参加していただき、いつも盛会となっています。心より感謝申し上げます。司会進行、聞き役を務めてくださった池上先生、そして宮城学院女子大学までお越しくださった小池昌代先生、貴重なひとときをありがとうございました。
さて、次回の作家特別対談は11月~12月の開催を予定しています。クリスマスの雰囲気が厳かに満ち溢れる宮城学院にぜひおいでください。