【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の18

【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の18

深 澤 昌 夫(日本文学科 教授)

足を洗い、毛並みを整え、小ざっぱりした後は、ごちそうである。

朱塗りの銘々膳に飯と汁もの、主菜に魚、かたわらに朱塗りの飯櫃が置かれ、これなら何杯でもおかわりし放題である。

「これは/\が、豪儀なご馳走だ。しかし…、あまり食すぎる(あまりに豪勢でつい食べすぎてしまう)。」

以前、腹を空かせてよその家に忍び込み、米の飯や鯛を喰い散らかしていた頃とは異なり、今では身なりも立派で、鈴の紋を染めた羽織をまとい、正座をし、箸を使って行儀よく食事をしている。

食器の配置を見れば、左手前に飯椀、右に汁物、右奥に魚(主菜)、左奥に副菜が並び、また皿こそ描かれていないが、左手で持ちあげた飯椀を受け皿にして今にも食べようとしているのは香の物かと思われ、これはまさに和食文化の基本である一汁三菜の配膳マナーに則っていることがわかる(なお関西では一部配膳位置が異なる地域もある)。

江戸期に発達・流通した「双六」は、その大半が庶民の「人生ゲーム」として作られている。

ゲームの参加者は、途中のコマで何らかのトラブルに見舞われたり、一回休みにあたって人に後れを取るなど、さまざまな有為転変や栄枯盛衰を経験するが、それでも、全体的に見れば、コマを進めるに連れて次第に地位や境遇が上昇・好転するようにできており、最終的に、これ以上望ましく好ましい状態はない、という段階(上り)に到達するようになっている。

双六は時期的にいつ遊んでもよさそうなものだが、江戸時代はたいてい正月の遊びとして企画・構想・発売されていたため、いずれの作品も何らかの「めでたさ」あるいは「縁起のよさ」を売りにしていた。

どら猫、野良猫、どろぼう猫だって、「よい内(家)に拾われ」、しかるべき飼い主のもとで育てば、「衣食も住も足りて礼節を知る」ことになるということか。

 

<其の19へ続く>