【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の19

【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の19

深 澤 昌 夫(日本文学科 教授)

主人公がようやくたどりついた新たな飼い主は、うら若い一人の女性であった。

その「ねえさん(姉さん、あるいは姐さん)」がこたつに入って、絵草紙を読んでいる。そしてこたつ布団の上には猫がいて、気持ちよさそうに昼寝をしている。

こたつのサイズを見ると、上に乗った猫が香箱座りをしてちょうどおさまる程度に描かれているところから、おそらく一人用のこたつであると思われる。ということは、この女性は一人暮らしなのだろう。

また、こたつが描かれているわけだから、季節は当然「冬」ということになる。

姉さんが手にしているのは、絵をメインとし、その周辺に文章を配した娯楽読み物、いわば江戸時代のマンガである。

双六などもそうだが、絵草紙あるいは草双紙と称される、庶民向けの娯楽・絵入り読み物には「決まりの発売時期」というものがあり、新刊はたいてい新春、正月に刊行されることになっていた。

したがって、姉さんがこたつに入って読んでいるのは、新春に合わせて発売された新作絵草紙かもしれない。

さて、姉さんの家の飼猫となり、安住の地を得た玉は(もはやその名で呼ばれているかどうかは不明だが、当面元の名で呼んでおく)、こたつの上で丸くなっている。

この双六のタイトルが「膝の上猫の寿古六」であるならば、姉さんの膝の上(実際はこたつの上だが)に上がり、気持ちよさそうに昼寝をしている図で、「めでたしめでたし」の「あがり」になってもよさそうなものである。が、そうはならない。

この双六にはまだ続きがある。双六が一種の「人生ゲーム」であるとすれば、玉にはまだしなければならないことがある。はて、それは何だろう?

 

<其の20へ続く>