深 澤 昌 夫(日本文学科 教授)
【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の17
深 澤 昌 夫(日本文学科 教授)

と、ここで再び「一休み」
「外をまごつくと、でえぶ毛が汚れるものだ。まず、今夜はありがてえ」
「まごつく」はどうしたらよいかわからず、あちこち迷い、うろうろすること。
猫は基本的にきれい好きな動物ではあるが、野良猫となった玉は、さすがに屋根の上から縁の下まで歩き回り、逃げ回り、からだの毛もだいぶ汚れてしまったようだ。
そんな玉をお姉さんが拾ってくれた。
それはいいけれど、家にあがるには、まず足を洗わなきゃならない。
なお、ここにはたんに外歩きで汚れた足を洗うというだけでなく、主人公が「まぐれ猫」「宿なし猫」「どろぼう猫」の境遇から「足を洗う」という意味も含まれているのだろう。
というわけで、玉は桶に水を汲み(汲んでもらって)、足を洗っている。
かたわらには櫛も用意してある。なるほど、これでからだの汚れを落とすんだな。汚れを落とし、毛並みを揃え、これから飼猫らしく小奇麗な猫に生まれ変わるのだ。
おや、櫛のそばには着替え用の浴衣もある。お姉さん、なんと至れり尽くせり。
猫を主人公とするこの双六では、裸身で四つ足の、まさに「猫」という図柄と、着物を身にまとって二本足で立つ擬人化された猫と、両方の姿が描かれている。
いうまでもないことだが、日本家屋は家の内・外が明確に区分され、土足で家にあがることはない。
犬と違って、室内で飼われることの多かった猫は、より人間らしい存在、人間に近い存在とみなされていたのだろう。
<其の18へ続く>
