【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の5

【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の5

深 澤 昌 夫(日本文学科 教授)

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「猫にもなれば、虎にもなる」

猫たちも、時と場合によって、大人しくもなれば、猛々しくもなる、という意味の諺である。

そう。猫にだって牙がある。爪がある。どんなに飼いならされても、猫は野性を失わない。虎がネコ科で最大の動物なら、猫は小さな虎なのだ。猫が爪とぎをするのもそのためである。

当家の坊やも、その本能と習性で、ついバリバリとやってしまう。すると、母猫が慌てて飛んでくる。

「坊や、障子で爪をとぐと、旦那さんに叱られるよ」

そのかたわらには、アワビ貝の餌皿と猫じゃらしの手鞠が転がっている。

仔猫たちは母猫に愛され、また当家の人々に可愛がられている。だが彼らも、人に飼われ、養われている「家猫」として、学ばなければならないことがある。

ここには、自分をお世話してくれる優しいお姉さん以外に「旦那さん」という人間がいることを…

いや、必ずしも父親・男性・旦那さんが怖いわけではない。やはり、猫がどんなに可愛くても、家中、所かまわず爪とぎをされては困る。それは今も昔も同じだろう。

だから、猫たちにもしつけが必要だ。
仔猫たちはよく食べ、よく遊び、来たるべき鼠との戦いのためにからだを鍛えつつ、良家の飼い猫・家猫として、いずれ社会的なルールやマナーを学習しなければならない。…が、事はそう単純ではない。

だって、猫だもの(笑)

きっと坊やは、何度注意されても、また障子で爪をといでしまうことになるだろう。

旦那さん、ごめんなさい! どうかゆるして!

 

<其の6へ続く>