【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の4

【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の4

深 澤 昌 夫(日本文学科 教授)

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画面左手の上、襖のかげに飼い主らしき女性がいる。

本図にはその手元しか描かれていないが、前のコマでかつおぶしを削っていた人と同じ着物、同じ人。おそらく当家のお嬢さんではなかろうか。

お嬢さんは手鞠にひもをつけ、襖の向こうで操っている。仔猫は大喜びで鞠に飛びつき、じゃれついている。見れば、尻尾が短い。いわゆるジャパニーズボブテイルである。ただし母猫の尻尾は長いので、あるいは父猫の遺伝か?

さて、画面右手に見えるのは、裁縫道具を入れる針刺箱。その傍らにあるのは「ふりだし」に描かれていた仔猫用の布団である。

飼い主であるお嬢さんは、わざわざ仔猫のために鞠を手作りし、できあがったばかりのお手製猫じゃらしで坊やを遊ばせているのである。

猫じゃらしは「猫戯らし」。要するに、猫と遊び、猫を遊ばせる道具のことだが、植物の猫じゃらしは本当は「えのころぐさ(狗尾草)」という。

「えのころ」は犬の子、犬ころの意。その緑色の花穂が犬の尻尾に似ているところからその名がついた。いわば私たちは犬の尻尾で猫を遊ばせているわけだ。

それはそうと、猫たちはなぜ私たちの期待通り、猫じゃらしに喰い付いてくれるのだろう?

それは猫に動くものや逃げるものを追いかける習性があるからである。それが肉食動物=捕食者としての猫の「野性」である。

つまり、猫じゃらしは「遊び」「戯(ざ)れ」といいつつ、家猫・飼い猫たちの「野性」を呼び覚まし、この子たちをまっとうな「ハンター」「狩人」に育てるためのトレーニングでもあったのである。

やはり猫たちも「かわいいだけじゃダメ」なのですね。「にゃにゃにゃ~ にゃにゃにゃ~」

<其の5へ続く>