ジェンダー教育研究センター開設準備委員会企画 「卒業生と学生をつなぐ―ライフ・キャリアの視点」

2024年秋、本学キャンパスにNPO法人ベビースマイル石巻 代表理事の荒木裕美さん(本学)を迎えました。長谷部弘学長、本学学生との語らいから、大学での学び、震災後の地域から立ち上がる子ども・子育て支援、市民にできること、さまざまの社会課題をともに考えるヒントをいただきました。

学生の率直な質問に答えてくださった荒木さん ありがとうございます。対話の一部を紹介します。

2024年11月11日@宮城学院女子大学 礼拝堂 ヴェリタス

インタビュー・取材協力 キャリア支援課

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荒木裕美さん……NPO法人ベビースマイル石巻 代表理事 仙台市出身:宮城学院高校卒、宮城学院女子大学学芸学部日本文学科卒。生命保険会社の勤務を経て、仙台から石巻に転居。子育て・妊娠中に2011年東日本大震災に遭遇。「自分のできることは何か」と、妊婦・未就園児親子の居場所作りを始める。東日本大震災で甚大な被害のあった石巻を中心に、地域に根ざした活動をしたいと、特定非営利活動法人ベビースマイル石巻を立ち上げ、現在に至る。こども家庭庁 こども家庭審議会。石巻市子ども・子育て会議委員などを歴任。

 

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学生S:荒木さん、今日はいらしてくださりありがとうございます。私は家庭科の教員を目指しております。家庭科では子ども、家族について扱う部分もありますが、子育てで大事なことはどのようなことでしょうか?

荒木さん:子育てはステージで違います。妊娠期から子どもの発達のなかで、自分はこれでよいのか、とくに初めての育児では自信のなさにとまどうこともあります。生きている赤ちゃんを育てていくのですから。「母になること」、理想の母親像に自分をあてはめなくてはならないと思うあまり、「だれもわかってくれない」と孤独になる。支援してあげよう、ではなく、話を聞いてみようかなという人と人の出会いが手助けになることもあります。

学生F:私は教育学科で、社会福祉士に興味をもっています。NPOの活動をなさっていて、あったほうがいい資格はありますか。

荒木さん:大学は、あたりまえに思えるかもしれませんが、教養をつんでいく場です。NPOの子育て支援活動をしていると、寄り添いながら合わせていける、学びながら、蓄えられている、人間的な教養の大事さを感じます。保育の知識も必要ですが、専門の人とつないでいくうえで、大事なのは「人権」意識。向かい合うその人の力をひきだす、エンパワーメントの過程が大切です。

学生T:「女性の活躍」がいわれますが、妊娠・出産、育児など、キャリアをすすめるなかで職場の無理解といった難しさもあります。

荒木さん:周囲の理解が大きいですね。私たちはNPO活動のなかで「お互いさま」でやってきました。やりがいを家族に理解してもらえるほど動けると感じます。パートナーは応援団ですね。

人はそれぞれ、その人なりの能力、取って代わることのできないものをもっています。女性の妊娠・出産だけでなく、性別や年齢を問わず、介護もある、本人の病気もあるかもしれない。ケアについてはいろんな事情があるからこそ「支え合い」が大事です。

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Q:子育て支援の活動で感じることは?

荒木さん:子育てひろばの活動は13年、3月(11日)が近づくと気持ちが重くなる人はおられます。時間を経て、自分から話すことで回復することもあります。

学生N: 子ども虐待に関心をもっています。虐待してしまう側のことが気になります。大人の支援も必要なのでは?

荒木さん:子育て支援にかかわっていると、虐待は紙一重、と感じます。人間の止められない感情を、どう理解して支援していくか。その人がそうなってしまった理由に分け入って考えねばなりません。親が「困りごと」に気づいていないこともあるし、子どもが大変になっているのに気づかないこともある。いろんな人を巻き込んで、子育てを「孤育て」にしない。子どもはつながりの中で育まれていきます。

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長谷部学長:行政とのかかわりも含めて、社会をよくするための働きについてうかがいたい。

荒木さん:今日大学にうかがい、振り返ってみますと、人生はどうなるかわからない。大震災の経験を経て、子育て支援の活動をすすめるなかで、いいこともあれば、落ち込むこともあります。そのなかで社会をよくするヒントは至る所にあります。自分が感じていることを口に出してみる。社会の思い込みを疑ってみる。生きる環境は自分でつくる。

学生の皆さんには、発信しながら変えていく、そのことをお伝えしたいと思います。

(文責:天童睦子)

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(インタビュー参加学生)

生活文化デザイン学科4年 八坂さん

教育学科3年 相澤さん

教育学科2年 高木さん

教育学科2年 千葉さん

 

(キャリアアップセミナー参加学生の感想より抜粋)

・将来自分が子供を持つようになったときに周りの人々や風景がどのように見えてくるのか、地域の人々とのかかわり合いや連携を保ちながら「孤育て」にならないためにどのように心がけ、行動していけば良いのかを改めて考えるきっかけになった。

・荒木さんの実体験に基づいた子育て支援と地域復興への情熱に心を動かされました。

・「声なき声に耳をかたむける」「大人の良かれは子供にとってどうなのか」がとても印象に残りました。私も荒木さんのように子供によりそえるような大人になりたいです。

・子供を尊重するというのは、子供にとって最前のことや考えることを優先することであり、いくら自分が母親の立場であったとしても自分の憶測で推し進めることがないようにしたいと思いました。

・子どもだから意見を聞かなくてもいいのではなく、子どもの意見を取り入れることそして意見を尊重することが大切だと気づいた。

・物資の支援も必要なことだが、精神面でのサポートも重要になる。コミュニティーがあること、味方がいることは子育てをする上で心強いものだ。そのような支援団体への理解が増え、社会での認知が広まることで、親が安心して子育てをできる世の中になってほしい。