戦禍の記憶を語り継ぐ 女子大学発「白黒写真カラー化」協力プロジェクト
河北新報「戦後80年」戦時下・戦後写真のカラー化に本学学生が協力
はじまりは2024年12月、本学のキャリア教育特別講義「戦争と平和の記憶をたどる―ライフキャリアの視点」(担当教員 天童睦子)であった。本学ジェンダー教育研究センターの準備期間で、ジェンダー課題や女性と戦争体験のテーマに関心を寄せた学生有志が集まった。授業の後半で、河北新報・せんだい情報部の方々から「戦後80年」企画について、同社が収蔵する戦時中と戦後の白黒写真のカラー化プロジェクトに協力する学生を募る旨が伝えられた。最終的には本学の学生有志14名がカラー化プロジェクトに参画。学生の専攻は歴史学、教育学、文学など多岐にわたり、学芸員課程で学ぶ学生たちも含まれた。
学生たちは12月に河北新報に出向き、同社の資料庫に収蔵されていた、戦時中・戦後の白黒写真の選定にも加わった。貴重な資料の数々を前に、ある学生は手のひらに収まる写真「石巻の女性たちの竹やり訓練」(1943年7月頃撮影)に見入った。本プロジェクトへの協力者で、仙台空襲経験者の堀江敏男さんが、当時の女性の服装や生活の一端を丁寧に語ってくれた。
2025年1月、写真のカラー化を数多く手がける渡辺英徳 東京大学大学院教授(情報デザイン)が来学くださり、人工知能(AI)を用いた彩色アプリや、画像編集ソフトの使用方法を学生に伝えた(2025.1.24掲載、同2.27掲載記事)。渡辺教授の複数回の指導に加えて、戦災経験者、歴史研究者の協力で監修を繰り返した。本学の教員もその過程を見守った(藤田嘉代子、大久保尚子、高橋陽一、菅野洋人ほか)。
カラー化の10枚のうち、仙台空襲を捉えた1枚は渡辺教授が先行して作業し(2025.1.8 朝刊掲載)、学生の協働プロジェクトによる9枚は「懸命な姿 色まとう」(2025.3.28. 朝刊掲載 その1/その2)の見出しで、同紙に掲載された。
数カ月にわたる学生の取り組みを見守った教員の一人、高橋陽一 教授(学芸学部 人間文化学科)は次のようにいう。
「学生のみなさんがパソコンに向かって一生懸命作業している様子が印象的でした。能動的に戦争を学べる、貴重な体験でした。その後も、別の写真のカラー化にチャレンジしている学生もいます。主体的に何かに取り組めたという点でも、有意義な企画だったと思います。」
このような地元メディアと大学生の協働作業は、デジタル技術を用いて、いかに記憶の風化に抗い、平和の希求に結び付けるかを考える一歩となった。地域に根ざす研究と教育にジェンダー視点でできることの可能性が広がる。
(文責 天童睦子 宮城学院女子大学名誉教授 ジェンダー教育研究センター顧問)
◆河北新報 2025年4月8日付け掲載記事はこちら
※リンク先(青字下線部)の新聞記事(6本)は、すべて河北新報社の許可を得て掲載
河北新報社にて 写真資料を見る学生たち 中央は堀江敏男氏