宮城学院女子大学大学院 健康栄養学研究科1年 粟野志歩 深澤律子
りんごプロジェクトは、今年度で3年目の活動となりました。これまで亘理・荒浜保育所の先生方、本学の院生・学生、教員で築き上げてきた実践を引き継いで活動をしました。私たちは、レッジョ・エミリアのプロジェクト型保育について学びながら、カリキュラムをデザインしていく中で、子どもたちの可能性や創造性を引き出すためには、どのように子どもたちに寄り添っていけば良いのか、何度も話し合いを重ねました。より良いカリキュラムを創り上げていこうと意見がぶつかることもありましたが、子どもたちの笑顔を思い浮かべながら試行錯誤する日々は、私たちにとって貴重な経験となりました。
本年度は、「“はてな”の木を創ろう」「りんご狩りをしよう」「りんごの実を熟させよう」「りんごの絵を描こう」「みんなで描いたりんごの絵を鑑賞しよう」の全5回で進めていきました。はじめに、りんごの“はてな”探しをキーワードに、色々な産地・種類のりんごを見て触って香りを嗅いで、りんごへの関心を深めていきました。りんごを観察しながら子どもたちは、「どうして、赤いりんごと黄色いりんごがあるの?」「りんごの頭とおしりはなぜへこんでいるの?」「りんごは、どうしてやわらかいものとかたいものがあるの?」など、次々とたくさんの“はてな”を見つけました。私たちは、子どもたちの感性や創造性の豊さを目の当たりにし圧倒されました。
りんご狩りでは、りんご博士に話を聞いて“はてな”を解決したり、自分たちが暮らす地域のりんごを自分たちの手で収穫し観察したりすることによって、りんごへの興味・関心をさらに深めました。みんなで一緒に収穫したりんごを見て、切って、食べていく中で「どうして、りんごには甘いところとすっぱいところがあるの?」など、さらなる興味を引き出すことへと繋がりました。しかし、私たちはそれに対してその場で答えを教えてしまったため、子どもたちの気づきを生かせませんでした。そのため、りんごの実を熟させる活動でも、ひとつひとつの“はてな”を解決しようとするあまり、子どもたちが見つけた新たな“はてな”について学びを深めていくことができませんでした。りんご狩りでの体験や子どもたちの新たな気づきを次の活動へと生かすことができなかったことは今後の課題であると考えます。
りんご園で収穫してきたりんごは、臨床美術の手法を使って、子どもたちが“私だけのりんご”として表現していきました。普段は、友達と同じような絵を描き、同じような色を選んでいた子どもたちが、自分がとってきたりんごの色のイメージでオイルパステルを選んだり、自分のりんごの絵に合う色画用紙を選んだり、ひとりひとりが異なる“私だけのりんご”を完成させました。また、互いに作品を鑑賞して、さらに褒められることで、子どもたちは、自分は褒められ、みんなから認められているのだという嬉しそうな表情をしていました。
プロジェクトへの参加が初めてだったこともあり、緊張をして淡々と進めてしまったり、一度にたくさんの言葉を子どもたちに伝えてしまったり、子どもに寄り添うということの難しさを改めて感じました。しかし、プロジェクトが進むごとに子どもたちと活動する喜びを感じ、私たち自身も子どもたちと一緒に楽しむことができました。今年度の経験を来年度の活動へと繋げていけるよう、来年度は、プロジェクトを行う前に5歳児の心身の発達を理解するため子どもたちの普段の様子を観察したり、一緒に遊んだり、子どもたちと一つになれるような活動を取り入れたいと考えています。
また、今回は、ドキュメンテーションに重点を置いて、子どもたちの発言や行動を記録し、その記録をもとに話し合いをしながらカリキュラムをデザインしようと試行錯誤を重ねました。しかし、子どもたちの学びや気づきを次回の活動へつなげたり、参加する全員で活動内容を振り返って共有したりすることができませんでした。このことは、日程等の問題もありますが、プロジェクトの目的やレッジョ・エミリアの教育概念を参加者全員で共通理解していなかったことが原因の一つであると考えます。このプロジェクトの最終的な目的は、“私だけのりんご”から“みんなのりんご”へと広げていき、みんなでひとつの大きなりんごの木を創ることでしたので、今後の課題としては、「プロジェクトの目的や概念を参加者全員で共通理解すること」「ドキュメンテーションを行い、次の活動に向けて話し合いながらカリキュラムを作成していくこと」「子どもたちの学びや気づきを次の活動に繋げること」の3点が挙げられます。
来年度は、今年度のドキュメンテーションをしっかり引き継ぎ、さらに子どもたちに寄り添うことができるよう、より一層保育士の先生方と、院生・学生とで十分に検討を重ねたカリキュラムを共に作り上げていきたいです。