【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の16
深 澤 昌 夫(日本文学科 教授)

まさに「捨てる神あれば、拾う神あり」
親元を離れ、帰る家を失い、たった一人でこの世を生きてきたアウトローであっても、それでも嫌わず、また嫌がらず「おいでおいで」をしてくれる、そんな心優しい人がいる。
たぶんここが猫と犬の違うところだろう。
犬好きの皆さんには申し訳ないが、どんなに犬が好きだといっても、さすがに野良犬を家族に迎えようという人は、そう多くはあるまい。
いったい、どんな人だろう?
小さな家である。玄関の土間(三和土(たたき))も狭い。この絵だけでは何とも言えないが、商家ではない。農家でもない。裏長屋の小家だろうか。
白木の格子戸(ささら戸)を開けると、すぐ上り口が見える。上がり框の向こうは、わずかに緑色になっており、室内は畳敷きかと思われる。
まずは小奇麗なたたずまいではある。
猫は玄関の内側まで入り込み、女ものの下駄の上に前脚を乗せてその人を見上げている。
例によって手先しか見えないが、猫好きはだいたい女性である。
「ニャゴニャゴ」「ゴロニャゴ」
そんな猫なで声が聞こえてきそうである。
ああ、これでひと安心。もう、食べるものも寝るところも心配しなくていい。
玉は「よい内(家)へひろわれ」、再びどこかの飼猫、家猫となった模様。
何はともあれ、めでたし、めでたしである。
<其の17へ続く>
