【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の15

【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の15

深 澤 昌 夫(日本文学科 教授)

道に迷って「まぐれ猫」となり、「宿なし猫」となり、ついには「どろぼう猫」となった玉は、生きるためにいろんなワルさを積み重ねてきた。

もちろん、玉に悪気はない。生来のハンターである猫にとって「ほしいものがそこにあるから」それを取る。ただそれだけなのである。

だが、貴重な食材を奪われ、御馳走や祝宴を台無しにされた人間たちは、そう簡単に許してはくれない。

あるいは、お魚くわえたドラ猫を裸足で追いかけていく陽気な人もいるかもしれないが、みんながみんな「今日もいい天気~♪」と、笑って許してくれる人たちばかりではあるまい。
【参考】「サザエさん」 作詞/林春生、作曲/筒美京平

そんなわけで、可愛げのない宿なしのどろぼう猫は、 「犬も歩けば」同様、人々に追いかけられ、追い立てられることになる。

「この猫め、たたきなぐるぞ!」

竹の棒をもって猫に殴りかかっているのは男の子である。どこかで見たような麻の葉模様の着物を着ている。このデザイン、当時は男女の別なく子どもたちの定番デザインであった。

さて、この絵の男の子の頭付きに注目すると、耳の上(この部分の髪を「鬢」という)と、うなじ付近のくぼみ(通称「盆のくぼ」)にだけ髪の毛が描かれており、
それ以外は頭部全体を青々と剃っている。この髪型を「奴」という。

江戸時代の子どもたちは、生後間もなく産毛を剃り、三歳になると髪置の祝いをして、それから髪を伸ばした。この男の子は側頭部の鬢も盆のくぼもさほど伸びていないところから、あるいは三歳を少し超えたぐらいかと思われる。

以前は犬に追われ、今度は人(子ども)に追われ、果たして我らが玉ちゃんに安住の地はあるのだろうか。

 

<其の16へ続く>