【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の10
深 澤 昌 夫(日本文学科 教授)

玉ちゃんは、魚のにおいに導かれあちこち冒険しているうちに、いつのまにか道に迷ってしまう。
「まぐれ」は「まぐれ当たり」の「まぐれ」。いろいろなものがまじり、まぎれて、何がどうとも区別がつかなくなること。だから「まぐれる」は道に迷い、さまようこと。
ここはいったいどこなんだろう。気がつくともう家並みは見えない。とんでもなく町はずれに来てしまったらしい。
「うちが知れないよ」
家に帰る道を見失った仔猫は、べそをかいている。
というわけで、本作の主人公玉ちゃんが道に迷ったので、このコマに来たら一回休み。ただし、その後で一の目が出たら、一気にコマを六つ飛ばして「よい内へひろわれ」に進むことができる。
双六には、サイコロを振ってコマを順に進んでいく「回り双六」と出た目の数によって指定されたコマに進んでいく「飛び双六」の二種類がある。この双六はその両方の要素を持った「飛び回り双六」であり、勝敗はより複雑になる。
さて、玉ちゃんはいったいこの後どうなってしまうのだろう。無事に元の飼い主のもとへ帰れるのか、はたまた別の誰かに拾われるのか、それともこのまま野良猫になってしまうのか?
かくして、玉ちゃんの身にさまざまな試練がふりかかる。もはや、飼い主のお世話も、母猫の愛情も期待できない。
だが、玉ちゃんにとっては、それが一人前の大人になるための第一歩であり、偶然一の目が出て、いきなり「よい内へひろわれ」に飛ぶような幸運に恵まれなければ、玉ちゃんは一コマ一コマ、コツコツ地道に行くしかない。それはまた双六で遊ぶ私たち自身の人生でもある。
<其の11へ続く>
