MTTミヤガク東北トラベルで行く! ふくしま鬼伝説&国宝見学の旅2022【前編】

よく晴れた10月30日、日曜日。

日本文学科発 幽玄会社MTTミヤガク東北トラベルの社員たち17名は、新規ツアー企画の現地調査&ガイドブックの現地取材のため、貸切バスを仕立てて一路福島に向かった。

前期は安達ヶ原の鬼婆伝説で有名な二本松の観世寺と、当地の豪族・大多鬼丸が本拠地とし、坂上田村麻呂率いる朝廷軍と壮絶な戦いを繰り広げたというあぶくま洞(大滝根山の鍾乳洞)周辺を探訪した(前期の記事はこちらから)。

kisyozan

さて、今回の調査地は郡山は西田町鬼生田(おにうだ)にある曹洞宗の寺院、鬼生山(きしょうざん)廣度寺(こうどじ)である。鬼生田はかの大多鬼丸誕生の地で、廣度寺には大多鬼丸を祀った鬼生明神堂がある。当日はご住職にご対応いただき、当地に伝わる大多鬼丸伝承について貴重なお話を伺うことができた。

lecture

次に向かったのは、福島の民芸品として有名な三春駒や張子人形などを製作している高柴デコ屋敷である。ここは複数の工房が集まり、それぞれ得意な分野でデコ(人形)を製作・販売している。

実は三春駒にも田村麻呂・大多鬼丸にちなむ謂れがあって、田村麻呂が蝦夷征伐で苦戦を強いられていた折、どこからともなく無数の馬たちが現れてその窮地を救った。それは清水寺の開祖賢心(のち延鎮)が奥州に向かう田村麻呂に贈った木彫りの馬たちであり、それをかたどったのが高柴木馬(たかしばきんま)、現在の三春駒だというのである。

oichi私たちは「将来のカリスマ」「元祖紳士」「チャレンジ王子」「ひょっとこ師匠」などという???な異名を持つ名工たちの手先に魅了されつつ、「秋の日は釣瓶落とし」とばかり、醤油を塗ってこんがり焼いた大ぶりの「おいち団子餅」(byデコ屋敷内おいち茶屋)で小腹を満たしつつ、次なる調査地に向かった。

何しろ福島は広い。県では北海道、岩手に次いで第三位の面積を誇る。だから移動に時間がかかる。

次の目的地は猪苗代湖の西側、会津地方である。修学旅行なら会津若松・鶴ヶ城は外せないところだが、残念ながら今回は素通りである。

さて、会津盆地の中央、河沼郡湯川村には真言宗の寺院、瑠璃光山勝常寺がある。午前中の調査地と違って、こちらは田村麻呂がらみの鬼伝説とは縁もゆかりもないが、「鬼は外、福は内」。やはり鬼と仏教は切り離せない。

私たちがお訪ねした勝常寺というお寺は平安時代初期に創建された古刹で、なんと本尊の薬師如来および脇侍の日光菩薩・月光菩薩の三体(いずれも平安初期の作)が国宝に指定されているほか、足下に邪鬼を踏みしだく四天王や柔和な表情を浮かべた十一面観音、聖観音、地蔵菩薩等々、重要文化財が九体もあるという、まるで博物館か美術館のような、文字通り「有り難い」お寺なのである。

今回、ご本尊を祀る薬師堂(これまた重要文化財)は修理中だったが、そのため国宝や重文に指定されている仏像の大半が霊宝殿(宝物殿)に移されていて、私たちはこれらを、ガラス越しでなく、普通ならありえないような距離で、しかも貸切状態で、文字通り目の当たりにする幸運に恵まれたのであった(仏像拝観は要予約・有料、写真撮影・模写等禁止です)。

 

後編に続く