11/26(土) 宮城学院創立130周年および日本文学会設立70周年記念特別公開シンポジウム「怪異と幻想の日本文学」を開催します(11/22情報追加)

kaii2016

今年、宮城学院は創立130周年を迎えました。そして日本文学科の教員と学生による自主的研究活動組織である「日本文学会」は、設立70周年を迎えました。

宮城学院女子大学学芸学部日本文学科ではこの記念すべき年を祝し、特別公開シンポジウム「怪異と幻想の日本文学」を開催いたします。

日時:2016年11月26日(土) 13時から16時半まで

教室:C201(講義館2階)

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犬飼公之氏(宮城学院女子大学名誉教授/古代文学) 「怪異と幻想の古代」

菊地 仁氏(山形大学名誉教授/中古・中世文学) 「擬人化を拒否する怖さについて―『今昔物語集』の霊鬼説話を読む」

伊狩 弘氏(本学教授/近代文学) 「近代の幻想文学について―江戸川乱歩を中心に」

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討 議

司会・進行 深澤昌夫(日本文学科長・本学教授/近世文学)

発題者

犬飼公之(宮城学院女子大学名誉教授 / 古代文学) 「怪異と幻想の古代」

怪異と幻想の文学はもとより想像力/創造力の所産である。しかし、それは妄想や仮象のイメージというのではない。そこにあるのは切実な内的現実の可視化にほかならない。さかのぼって奈良時代文学において、それは神異、霊異の「かたり」としてとらえられる。ここではまず『古事記』(日本神話)の黄泉国訪問をとりあげ、古代日本人の死生観とのかかわりを、次いで『日本霊異記』(仏教説話)にみる地獄のイメージと現世における罪償とのかかわり、および景戒の夢をとりあげ、仏教教理と人間存在とのかかわりをとらえよう。その神異、霊異のありようは「怪異と幻想の文学」の史的変遷の一端を示唆することにもなる。

菊地 仁(山形大学名誉教授 / 中古・中世文学) 「擬人化を拒否する怖さについて ─『今昔物語集』の霊鬼説話を読む─」

柳田國男によれば、妖怪(お化け)はそれと遭遇する場所が固定的であり、幽霊はそれと遭遇する人物の方が固定的である。ここに取りあげる平安時代後期の説話集『今昔物語集』の本朝部には、その意味で、幽霊よりむしろ妖怪と呼ぶべきものが数多く収録されている。さらに、それらの説話にあっては、おおむね妖怪の正体が鬼ないし動物であったと謎解きされる。しかし、そうした擬人化ないし生物化を拒むかのような異質の霊鬼説話も、わずかながら『今昔物語集』には存在する。今回、その種の無機質な妖怪が登場する説話の具体例として、『今昔物語集』巻二十七の第十八話を取りあげ、それがもたらす恐怖の意味を少し考えてみたいと思う。

伊狩 弘(宮城学院女子大学日本文学科教授 / 近代文学) 「幻想文学について」

すべての文学は幻想性を持っているし、人間はすべてにおいて幻想性をいくらかずつ帯びている。たとえば、誰か(私でもいい)が好きな本を開いて読み始めると、たちまち私の心や目の中には本の中の人物や情景が広がり、動き始め、私をその中に浸らせる。それは私だけの幻想に浸る喜びであるとも云える。それは書物だけに限らない。この夏に体験した嬉しい、又は悲しい体験・情景、それはもう二度と同じかたちで再現することはない。しかし目を閉じて思いを凝らせば、心の中にはありありとその情景が浮かんで来るだろう。それこそ幻想ではないだろうか。今回のシンポジウムでは、幻想文学と江戸川乱歩について語りたい。

コーディネーター 深澤昌夫(宮城学院女子大学日本文学科教授 / 近世文学)

 

晩秋の美しい土曜日、魅力溢れる日本文学の世界が皆様のお越しをお待ちしております。学内、学外問いません。一般の方も大歓迎です。卒業生の皆さん、ぜひおいでください。事前申し込み不要、入場無料、当日、直接会場にお越しください。また、駐車場には限りがございますので、学外からお越しくださる際は公共交通機関をご利用ください。

宜しくお願い致します。

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特別公開シンポジウム「怪異と幻想の日本文学」によせて 日本文学科長 教授 深澤昌夫

日本の文学は、古代の「記・紀」神話はもとより、「物語の出で来はじめの祖」といわれる『竹取物語』、古典中の古典と称される『源氏物語』、仏教説話の宝庫『今昔物語集』、歴史と動乱の一大叙事詩『平家物語』、あるいは能も歌舞伎も文楽も、ずっと下って在地の伝承を書き記した『遠野物語』も、宮沢賢治の幻想的な作品群も、果ては世界中で愛されているポケモンも、昨今人気の妖怪ウオッチも、どれもこれも神仏、鬼神、幽霊・亡霊・生霊(いきすだま)、狐に狸に付喪神(つくもがみ)…といった、超現実的で不思議な世界と非常に強い親和性があります。もし、これらを「怪談」というのであれば、日本文学の大半は何がしか怪談的な要素をもっている、といってもいいでしょう。あるいは、もしこれらを「ファンタジー(超現実的な空想・幻想・伝説・奇談)」と呼ぶことができるとすれば、日本は古来ファンタジー大国だと言っても過言ではありません。

むろん、怪談と言っても「怖い」だけではありません。ファンタジー、と言っても「ほのぼの、楽しい」だけではありません。日本の文学にとって、というより私たち日本人にとって、「目に見えない世界」はこちら側の「目に見える世界」と同じくらい、あるいはそれ以上に重要な「もう一つの世界」であり、むしろよどみに浮かぶ泡沫(うたかた)の如き私たちの現実世界、いわゆる「リアルな世界」は、実は目に見えない「大いなる世界」に支えられ、そうしてかろうじて存在している、というべきかもしれません。

私たちは自力で「生きる」以前に「生かされて」います。そもそも私たちは、自分たちだけで生きているわけではありません。人間は世界の頂点に君臨する「絶対王者」、というわけでもありません。そういう、あたりまえのことを忘れると一体どういうことになるか……。おごれる人、たけき者がどうなったかは皆さんよくご存じのことでしょう。

今年、宮城学院は創立130周年を迎えました。また、昭和21年(1946)宮城学院女子専門学校・国語科に教員と学生からなる国文学会(日本文学会の前身)が創設されて、この11月でちょうど70周年になります。日本文学科ではこれを記念して、来たる11月26日(土)午後1時より、特別公開シンポジウムを開催いたします。テーマは「怪異と幻想の日本文学」。発題者は本学名誉教授 犬飼公之氏(古代文学)、山形大学名誉教授 菊地仁氏(中古・中世文学)、本学教授 伊狩弘氏(近代文学)の三氏。コーディネーターは深澤(近世文学)です。

怪異、霊異、驚異の世界。日本文学には、古代から現代まで脈々と受け継がれ、私たちを魅了してやまない世界があリます。今回のシンポジウムでは、上記三氏の発題と討議に導かれ、そのような「もう一つの世界」に私たちを誘(いざな)ってくれる日本文学の尽きせぬ魅力と奥深さの一端を解き明かしたいと思います。晩秋の一日、怪異と幻想の豊饒の海に漕ぎ出すもよし、また溺れるもよし。学生・教職員はもとより、関心のある方々に大勢お集まりいただいて、実り多いひと時を過ごしたいと思います。

なお当日は入場無料、聴講自由、事前申し込みも不要です。皆さまお誘い合わせの上、宮城学院にお出ましください。多数の御来駕をお待ちしております。

 

お問合せ先:日本文学科副手室(022-277-6121)