12/7(水) 村田沙耶香氏(芥川賞作家) × 池上冬樹氏(文芸評論家) 一般公開作家特別対談を開催します(11/21情報追加)

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日本文学科は日本文学会と共催で、作家特別対談 村田沙耶香氏(芥川賞作家) × 池上冬樹氏(文芸評論家・本学非常勤講師)の一般公開特別対談を開催します。

日時 2016年12月7日(水) 14:40-16:10 (開場14:00)

会場 宮城学院女子大学 礼拝堂

日本文学科主催作家特別対談は2014年に始まり、これまで、唯川恵氏、穂村弘氏、中村文則氏、角田光代氏、東山彰良氏をお迎えしてきました。そしてこの度、第6弾のゲストとしてお迎えするのは、今年『コンビニ人間』(文藝春秋)で第155回芥川賞を受賞した村田沙耶香氏です。

学科、学年はもちろん、学内、学外問いません。一般の方も大歓迎です。ぜひ皆さまおいでください。全席自由、入場無料、事前申し込みも必要ございませんので、直接会場にお越しください。また、駐車場には限りがございますので、学外からお越しくださる際は公共交通機関をご利用ください。

同時に、関連イベントとして

宮城学院女子大学図書館×日本文学科 特設展示「村田沙耶香の世界」
11月7日(月)-12月9日(金) 第一閲覧室

宮城学院生協×日本文学科 「村田沙耶香ブックフェア」
11月中旬-12月7日(水) 書籍コーナー

宮城学院女子大学日本文学会×日本文学科 特設展示「村田沙耶香に出会う」
11月7日(月)より 日本文学科図書室
*日文生限定

も開催します。こちらにも足をお運びください。当日は、村田沙耶香さんによるサイン会も予定しています。ご期待ください。多くの皆さまのご来場をお待ちしております。

お問合せ先:日本文学科副手室(022-277-6121)

 

◆村田沙耶香(むらた・さやか)氏

1979年、千葉県生まれ。玉川大学文学部芸術学科卒。2003年「授乳」で第46回群像新人文学賞(小説部門優秀作)を受賞してデビュー。09年『ギンイロノウタ』で第31回野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞、そして今年『コンビニ人間』(文藝春秋)で第155回芥川賞を受賞している。純文学の作家で、野間文芸新人賞、三島賞、芥川賞の三冠を獲得した者は村田以外に二人しかいない。

文学賞にはからまなかったものの、昨年の暮れに出た『消滅世界』(河出書房新社)は各紙誌で絶賛され、中村文則は「さすが村田沙耶香。この作家はすごい」と激賞したほど。中村文則以外にも村田沙耶香を高く買う作家は多く、なかでも西加奈子は、「村田沙耶香という作家から、目が離せないでいる。彼女がくれる言葉は、私をいつも救ってくれる。村田沙耶香の作品を読むことが出来ないことは、とんでもない不幸だ」(朝日文庫『しろいろの街の、その骨の体温の』解説より)と熱い賛辞をよせているほど。村田沙耶香はいま最も注目を浴びている女性作家である。著書はほかに『授乳』『マウス』『星が吸う水』『ハコブネ』『タダイマトビラ』『殺人出産』など。

 

**池上冬樹先生より今回の特別対談に寄せて**

■切実で真摯な村田沙耶香を読むことは幸福です。

ある雑誌から依頼されて、村田沙耶香の『消滅世界』(河出書房新社、2015年12月)を読んだのが始まりだった。わが中村文則が帯に「さすが村田沙邪香。この作家はすごい。」と賛辞を寄せているのだが、「すごい」のは中村文則ではないかと思った。一昨年の「山形小説家(ライター)講座」でも、昨年の宮城学院女子大学でのトークショーでも、いかに凄いかを語ることができた(来年2月26日「せんだい文学塾」にもお招きして、また語り尽くします)。しかし一読して驚いた。中村文則がいうように、村田沙耶香も、本当に凄いのだ。小説には、強烈な毒を孕む驚くべき世界観がある。

つまり、人工授精が飛躍的に発達して、人工授精で子供を産むようになり、夫婦間のセックスは〈近親相姦〉として忌避されている未来社会が痛烈。家族、セックス、愛、母性といったものを全部無効にして、もう一度根底から考えさせるのだ。人類の理想郷の徹底した追求の先に、グロテクスな反理想郷となる現実が待ち構えていることをリアルに描いている。しかも作者の筆致はどこまでも自然で、しなやかで、ときに大胆で、辛辣。それでいて温かく優しく剣呑だから、おそれいる。現代文学の一つの到達点として推奨できる圧倒的傑作だと思った。

『消滅世界』に感動して、次々に未読の村田作品を読んだ。とりわけ『ギンイロノウタ』(新潮文庫)にふるえ、『殺人出産』(講談社文庫)に驚き、『しろいろの街の、その骨の体温の』(朝日文庫)に泣いた。それは僕ひとりだけではなく、中村文則以外にも多くの作家や評論家たちが熱烈にほめている。なかでも、作家の西加奈子がとびきり熱い文章をよせている。つまり“村田沙耶香という作家から、目が離せないでいる。(略)彼女がくれる言葉は、私をいつも救ってくれる”というのだ(引用は『しろいろの街の、その骨の体温』の文庫解説より。以下同じ)。村田作品は過激と言われ、目を背けたくなるような描写もあるものの、“結局夢中になって読んでしまうのは、作品にあふれている真摯さ、そして切実さのためだ”。“村田沙耶香は、自身も含めたあらゆる人が抱える性的な違和感や、社会という大きな化け物の中で生きなければならない苦しみを、ほとんど人生を賭したような熱量で描いている”と書いたあとに、こう続けている。

私たちは未だ、価値観の奴隷だ。知らぬうち、誰かに与えられた価値観に寄り添って生きている。・・私たちはもっと、自分を愛してあげることが出来るのではないか。/自分の中に見つけたもの、それがたとえ醜さだったとしても、私たちはそれすら愛さなければならない。なぜなら、それを含めて大切な大切な私だからだ。/この作品は力の限り、全身で叫んでいる。あなたはあなたなのだ、と。/まぎれもなくあなたなのだと。/私は私の美しさを見つけよう。とても困難だが、必ずやってみせよう。/勇気をくれたこの物語を、村田沙耶香の傷だらけの叫びを、私は絶対に忘れない。

そう、村田沙耶香は生きる勇気をくれるのである。作品を一読したら、絶対に忘れることはできないだろう。“この時代に村田沙耶香の作品を読むことが出来ないことは、とんでもない不幸だ”とも西加奈子は書いているが、今年、村田沙耶香は『コンビニ人間』で第155回芥川賞を受賞して、幸福な人間が少し増えているのではないか。芥川賞選考委員の川上弘美は「おそろしくて、可笑しくて、可愛くて、大胆で、緻密。圧倒的でした」と評し、テレビでは読書芸人たち(又吉直樹、光浦靖子、若林正恭)も絶賛して、売れ行きは純文学では異例の50万部を突破しているという。

村田沙耶香はいまもっとも注目を浴びている女性作家であり、読めば絶対に“作品にあふれている真摯さ、切実さ”に夢中になり、ずっとフォローしていくことになるのではないかと思う。ぜひとも、“この時代に村田沙耶香の作品を読むこと”の幸福と、宮城学院女子大学で出会えることの喜びをかみしめてほしいと思う。お待ちしております! (池上冬樹)