いまこそ「よむ本」:ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

2020.06.08


 
学芸学部英文学科 酒井 祐輔 助教 [教員プロフィール]
 

イギリス、と聞いたとき、 みなさんが真っ先に思い浮かべるのはどのようなイメージでしょうか?バッキンガム宮殿や紅茶、『ピーター・ラビット』のような児童文学を思い浮かべる人もいるかもしれません。しかしこの本が描き出すイギリスはそうしたイメージとは大分違う、著者の表現を借りれば「いじめもレイシズムも喧嘩もある」世界です(強いて近いものを挙げるなら、映画『キングスマン』の主人公、エグジーの日常世界でしょうか)。

この本がすごいのは、様々な「大きな」問題が、日常生活のディテールを通じて浮かび上がってくるところ。例えば、雨の日学校に行くときに誰の車に乗せてもらうか、みたいな中学生男子の友人関係をめぐる悩みが、人種差別や階級の問題とダイレクトにつながっていたりする。子育てというのはこんなにもいろいろなことにつながっているのかとびっくりします。

多文化共生から環境問題まで、21世紀的なアジェンダを幅広くカバーした入門書としての読み方もできるし、イギリスの中学校がどんな教育を行っているかも垣間見えるので、そこが面白いと感じる人も多いはず。人それぞれの楽しみ方ができる一冊なので、ぜひ手に取ってみてください。

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