【「図書館司書職の国際比較(その1)」はこちらをどうぞ】
『大学ランキング2017』(朝日新聞出版、2016年刊)という本(MOOK)があります。2017年版は、国内762大学を対象に67項目の上位ランキングを報告しています。図書館関連では、「大学図書館ランキング」と「機関リポジトリ」の項目のみです。北米では「大学図書館は大学の心臓である。」という言葉がありますが、2項目しか採用されていないということは大学図書館が重要視されていない日本の風土が反映されているといえます。それはさておき、宮城学院女子大学が67項目のうちで登場しているのは4・5か所のみです。その中で本学が「大学図書館ランキング」で堂々?141位にランクされています。「図書館ランキング」は4つ指標の合計を数値化しています。それらは「蔵書数」「図書受入数」、「館外貸出数」、「年間予算」です。これらの指標は大型大学に有利と思われる中で健闘といえます。以下、同書の「大学図書館ランキング」から読み取れる点を以下に記します。
1)本学図書館141位の深奥
大学規模の点で不利にもかかわらず本学が141位に評価されているのは、4つの指標のうち「館外貸出数」で高得点を得ているものと思われます。3・4年位前、学術情報委員を務めていた時に、丸善派遣スタッフに「10学科あるうちどの学科の学生がよく図書館を利用していますか?」と質問をしたことがあります。「日本文学科と国際文化学科です」という答えでした。日本文学科は図書館司書課程があることもありますが、日本文学科と国際文化学科にあえて共通な点は、北米で正式に大学講義を受けた経験のある教員の存在が考えられます。北米の授業では教科書のみではなく、図書館資料、たとえばリザーブ資料として図書の一章や、雑誌論文のコピーが必読共有資料として用意されますので、図書館に行かなければ単位がとれない、よい成績がもらえないというハードルが備わっており、教員が授業と図書館をうまく連携した教授法を実施しています。授業評価で、「あなたはこの授業の関連で本学の図書館を利用しましたか。」という項目を加えればより明白になります。ちなみに「大学図書館ランキング」(175位まで表示)に登場する宮城県内の他大学は、東北大8位、東北学院大175位のみです。
2)国際基督教大学(ICU)が1位(2017年版)の理由(わけ)
国際基督教大学は毎年最上位にランクさていています。この大学は「館外貸出数」が満点です。館外貸出数に制限を設定してないこともありますが、大学院生も含め学生全員に対する図書館利用教育が徹底しています。図書館経営も北米流で館長は国内・国外で図書館情報学の修士を得た職員が少なくとも2代就任しています。他大学の図書館司書の訓練も実施するといった運営面でも国内トップクラスの実績もあります。卒業生は勤務先の図書館を顕著に利用する傾向があり、また図書館学の専攻がないにも関わらず、国内、国外の図書館で活躍している卒業生も見かけます。図書館が身近にある日本で稀有な大学です。
3)「大学図書館ランキング」は図書館サービスの質を反映しているかという疑問
上記ランキングの最大の問題点は図書館司書という人的資源の質を測る指標が含まれていないことです。図書館の良し悪しは人(図書館専門職)で決まるといっての過言ではありません。データ収集、指標の取り方に難しさがあるにせよこの指標が含まれていなければ大学図書館の真の評価を反映していないといえます。図書館司書に関する指標として、1)学歴、2) 図書館情報学主専攻、3) ダブル修士(サブジェクト司書)、4) 国際標準司書(アメリカ図書館協会認定修士課程修了等)資格といった項目を点数化し、専門職正規職員数で割るといった方式が考えられます。このような人的資源の指標を加えればランキングの順序が大幅に変わると思われます。上記の国際基督教大学は人的資源の指標を考慮に入れても最上位と思われますし、また図書館情報学課程を有する少数の大学が上位に浮かびあがってきます。さて本学は?
(桂 啓壯 かつら・けいそう 図書館情報学・学術コミュニケーション)
一般教育部よりお知らせ:桂先生の最終講義が、2月7日(火) 10:30(2校時)から行われます。場所は、C308、演題は「図書館と私」です。どなたさまもぜひお越し下さい。【重要:最終講義は都合により延期になりました。日程が決定次第改めてお知らせします】