【備忘録 思索の扉】 第六回「図書館司書職の国際比較 その(1)」

本学の図書館司書課程は日本文学科、英文学科の2学科にて開講され、一学年約100人程度が在籍し2年生から4年生までの3学年の学生が学んでいます。主力は日本文学科となっています。図書館司書課程に登録し最終的に司書資格をできるのは、6割から7割程度と思われます。図書館司書課程を修了するには、3年間で約15科目の単位をすべて取得する必要があります。図書館司書課程の必要科目・単位を取得し、大学を卒業すれば晴れて日本国内において図書館司書資格を得ることになります。
これから図書館界に身を投じてみたい、その業界の実態を垣間見たいという方々に、1980年代ではありますがアメリカでの図書館司書資格を取得し、かつ世界約47か国・地域を訪問し様々な図書館を見学した国際経験と、国内では北は北海道立図書館、札幌市立中央図書館、南は沖縄県立図書館、那覇市立図書館までの47都道府県立図書館および県庁所在地にある市立中央図書館すべてを訪問した国内経験等をもとに図書館司書職と図書館サービスの評価についての小論を2回に別け陳述したいと思います。
世界的に見て、図書館司書は女性が多く、職業社会学的な見地でのプレステージ(社会的地位)や給与所得において相対的に低い地位に甘んじています。地味で、裏方的な仕事で、特に目録業務を好む人は非社交的に見られがちです。図書館運営がほとんど非営利で運営されているため公務員的気質が濃くなりがちです。ただし、まじめで、知でもって世の中に貢献したいというライブラリアンシップという気質を持ち合わせています。
さて、図書館司書職の国際比較で日本と西欧先進国、特にアングロサクソン系の国々との顕著な違いは教育制度と職能団体の活動にあります。西欧先進国では、専門職大学院で図書館学の修士課程の学位(Master’s degree)を取得して専門職として認められます。大学院といっても大学院生は、大学院に入学し初めて図書館学を学びます。一方、日本は短大を含め大学学部(undergraduate)レベルで国家資格としての図書館司書資格を得ることができます。図書館司書養成を大学院レベルで遂行するのが国際標準のようになっていますので、日本は遅れをとっています。国際間の人の移動が多くなり、一国で取得した資格を他国で認定する問題が生じてきていますので、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの図書館協会は図書館司書資格の認証において、その国の図書館協会が認定した修士課程プログラムを修了した人を他国においても専門職(professional)として処する協定を結んでいます。このことは例えばアメリカの図書館で働こうとしても日本の司書資格では専門職としての地位、待遇が得られないことを意味します。日本の図書館司書資格は、法的にも教育内容においても、公共図書館に限定さていますので、他の図書館の種類、例えば国立図書館、大学図書館、専門図書館、学校図書館での人材養成に対応いているとは言いがたくなっています。この点でも西欧先進国に見劣りします。
最近の大学学部や大学院設置が国内で進む看護師養成の高等教育化がうらやましくも思われる所以です。

(桂 啓壯  かつら・けいそう 図書館情報学・学術コミュニケーション)