教員のリレーエッセイ:生活文化デザイン学科 准教授 藤田嘉代子

家族社会学とわたし

生活文化デザイン学科教員の藤田です。文化人類学の領域にオートエスノグラフィーという概念があり、家族社会学を考える上で参考になります。簡単に言えば、研究者が自己の個人的経験を調査し、そのストーリーを文化的、政治的、社会的に意味づけ現実理解に結びつける手法の一つです。わたしがやってきた研究は実にオートエスノグラフィックですね。

みなさんのような年齢の頃、受験のため浪人していた私。突然サラリーマンである父が亡くなって、母子家庭となり今でいうヤングケアラーになりました。働きに出る母の代わりに主婦役割を担当し家計のためにアルバイトにがんばりますが、そうこうしている間に再度受験に失敗し2浪という憂き目にあいます。当時は女子の多くが短大に行く時代。短大にしなさいとは言わなかった親なのですが、長女として家族のためにがんばっても、受験の結果は自分の結果。しばらく受け入れがたくて、私が男だったらとどうだったろうと思いました。ジェンダーについて考えるきっかけとなりました。

 

またもう一つのエピソードは子育てです。大学院生の時に出産しましたが、夫は出張の多い仕事、また手伝ってくれる母も亡くなったので、かなりの「弧育て」だったと思います。特に子どもの保育園が始まるまでは、広報に載っているイベントにせっせと通い、そこで知り合った人の家におしかけて行ったり。それまで当たり前に出かけていた都心も研究会も小さい子どもを連れて行くにはたいへんなハードルがあります。子どもを育てる側になることは、自分が心地よいと感じ築いてきた人間関係や場所から疎外されること、それまでの自分と断絶させられるような感覚に陥りました。でもそこで得た、子育てとは何なのか、親たちはどのようにそれを実践しているのかという問いが家族社会学領域でケアを研究するきっかけになりました。

 

みなさんにとって、個人的な「?」はありませんか。

人が生きていく限り必要なケアを誰の仕事とするのか、どう社会的に位置づけていくか、当たり前はありません。私たちは個人的な経験から社会を理解することもできますし、社会を変えることもできます。本学がみなさんの「?」を解きほぐす場になればと思います。

(写真左:3年のゼミでは大学附属・子ども園を見学、写真右:大学祭でアンケート調査に奮闘するゼミ生たち)

 

◆藤田嘉代子 准教授(生活文化デザイン学科)の教員紹介ページはこちら