こんにちは。今年2023年4月から音楽科で音楽史などの授業を担当している越懸澤麻衣です。専門は「音楽学」という、音楽の歴史や理論などを研究する学問で、私はとくに18~19世紀の西洋音楽に興味があります。なかでも、ベートーヴェンについての卒業論文を書いて以来、ベートーヴェン研究は私の大きなテーマのひとつです(このドイツの「大作曲家」について書かれた本は、一生かかっても読み切れないほどありますから!)。そしてもうひとつの研究テーマとして、最近、関心を持っているのが「セノオ楽譜」です。今年の春、研究成果をまとめて『大正時代の音楽文化とセノオ楽譜』を出版しました。
これまでに出版した本
◆『ベートーヴェンとバロック音楽:「楽聖」は先人から何を学んだか』(音楽之友社、2020年)
◆『大正時代の音楽文化とセノオ楽譜』(小鳥遊書房、2023年)
など
みなさんは「セノオ楽譜」を知っていますか。これは今から100年ほど前、大正時代の日本でとても人気のあった楽譜で、古今東西さまざまなジャンルの歌とヴァイオリンの曲が収められています。セノオ楽譜の客層は幅広かったのですが、とりわけ女学生に大人気だったそうで、たくさん買い集めた人もいたとのこと。本学の前身、宮城女学校の生徒たちにもセノオ楽譜のファンがいたはずです。というのも版元のセノオ音楽出版社は、東京や大阪の特約販売店だけでなく、日本全国津々浦々で買えるよう通信販売にも力を入れていましたので、仙台からも簡単に注文できたのです。
セノオ楽譜といえば、なんといっても竹久夢二などが手がけた色鮮やかな美しい表紙。カワイイもの好きの女学生の心をとらえたのも頷けますね。
(写真:セノオ楽譜の表紙/筆者所蔵)
とはいえ、「楽譜」が女学生に人気、というのは今ではちょっと考えにくい状況ではないでしょうか。しかし当時のモダンガールたちには、ピアノやヴァイオリンで奏でる西洋音楽は大きな関心事だったのです。
よく売れた曲のなかには、《夜のしらべ》や《チッペラリーの歌》など、令和の時代にはもうほとんど歌われなくなった歌も少なくありません。一方、《荒城の月》や《浜辺の歌》など、みなさんがきっと中学校の音楽の授業で歌ったことがある曲も、セノオ楽譜から出版されていました……と考えると、これが完全に「過去」のものではなく、今につながる話題であることがわかります。
このように音楽文化の歴史をひもといてみるのもおもしろいと思いませんか。ぜひ、宮城学院で一緒に勉強しましょう。
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