教員のリレーエッセイ:人間文化学科 准教授 杉井 信

本学の人間文化学科には「海外フィールド実習」という科目があり、学科教員が交代で毎年開講しています。これがどんな科目なのかは、学科紹介のページを見てもらうとして、ここでは、私が実習を計画し実施する際に重要と考えている「ともに学び合う」ことについてお話ししたいと思います。
私は東南アジアのフィリピン研究が専門ですので、実習はいつもフィリピン(の諸都市)で行います。実習にはさまざまな活動が含まれますが、私は「現地調査」をその柱としています。本学の参加学生は、訪問の数ヶ月まえに「調査課題」(フィリピン全体あるいは訪問地特有の文化や社会、歴史や自然などに関すること)をそれぞれ(個人またはグループごとに)自由に設定し、読書やネット検索などで調査に備えます。フィリピン到着後、活動パートナーとなる現地のフィリピン人大学生とともに、数日間、街中やキャンパスで協力して調査を実施し、調査報告を現地学生の前で口頭発表します。先に「ともに」と言ったのは、こうした活動を指しています。

本学学生が外国で様々なことを直接調べるというのは容易ではないですし、当然、準備や努力が欠かせません。現地学生の側も、充分に協力するためには、やはり準備や努力が必要です。言語について言うと、本学の参加学生のなかには英語が苦手な人も少なくありませんでしたし、現地学生で日本語ができる人も、ほぼゼロでした。
それでも、過去の本学・現地の参加学生たちの多くが、様々な困難や違いを乗り越えて、相手側の学生に配慮し、グループとして努力してくれました。調査の結果ももちろん大切ですが、その過程での努力はもっと重要だと思いますし、そこでの苦労が大きかった人ほど、満足も大きかったことでしょう。参加者の多くは、ともに学び合うことの意義を理解してくれたのではないかと私は考えています。