食品栄養学科教授 星祐二

皆さん、こんにちは。
食品栄養学科の星祐二です。

私は食品栄養学科で食品系の授業をいくつか担当していますが、専門は食品物性学です。
食品物性といっても、初めて聞く言葉だと思いますが、
「本来混じり合わない水と油からマヨネーズができるのはなぜ?

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「卵を加熱すると固まるのはなぜ?」
「卵白をかき混ぜると泡が立つのはなぜ?」
「ゼラチンゼリーと寒天ゼリーの食感の違いをどう表現すればいい?」など、食品の物理・化学的特性を明らかにする学問なのです。

 

でも食品物性学は、実は皆さんにとっても、とても身近な内容だと思います。

 

 

 

図1の左側は手作りマヨネーズの顕微鏡写真です。ソラマメみたいな形をしたのは、サラダ油が細かい粒になったもので、ギシギシと押し合い圧し合い(へしあい)している様子がわかるでしょう。ですから、マヨネーズって粘り気が強くて、デコレーションができるのです。一方、図1の右側はメーカー製のマヨネーズの写真です。サラダ油の粒(油滴)が小さく、大きさも揃っているでしょう。そのため、市販のマヨネーズは使いきるまでにサラダ油とお酢に分離しないのです。

最近、私が取り組んでいる研究は、緩衝能の簡単で正確な測定法の開発です。「緩衝能」というのは、液体の酸性や塩基性の目安となるpH(化学を学んでいる方はわかりますね)の変動を抑制する能力のことです。特に味噌汁や牛乳はその能力が高く、お味噌や牛乳を使った料理の味は「まろやか」と言われる一因にもなっています。

ちなみに、お酢の成分である酢酸もとても酸っぱい味がしますが、pH3.5~5.5の弱酸性にかけて強い緩衝能を発揮します。酢酸の緩衝能の理論式は下式で表されます(略号が何を意味するかは省略します)。

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上の式の左辺の意味は,pHを1増やす(塩基性を強めること)のに必要な塩基(B)の濃度なのですが、厳密には微分(pHに関する導関数)です。数学で微分・積分を学んでいる方なら、なんとなく分かるかもしれませんね。食品の研究と言えば、化学の実験とばかり思っていたのではありませんか。
実はそうではなく、数学や物理の知識も必要な時があるのです。今、数学や物理を学んでいる方、大歓迎です(笑)

食品栄養学科では、3年生の「卒業研究基礎演習」を経て、4年生で研究室に所属して卒業研究に取り組むシステムになっています。ちなみに私の研究室では、こんな卒業研究が行われています。

最近、「米粉」という言葉をよく聞くでしょう。米粉を使ったいろいろな食べ物が市販されたり、レシピ本がずいぶんと出版されています。「米粉」は読んで字のごとく、米の粉ですよね。昔から、お米の粉なら「上新粉」がありますね。いわゆる「米粉」とはどう違うのか疑問に思ったことはありませんか。

図2の左側は上新粉、右側は「米粉」を走査型電子顕微鏡で300倍で観察したものです。

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どうですか?
粉の大きさが全然違うでしょう。お米は硬くて細かくするのが技術的に難しく、最近は製粉技術が改良されて、写真のような細かな米粉にすることができるようになって、いろいろな食べ物で小麦粉の代わりに活用され始めたのです。

 

 

さて、米粉パンを作るときには米粉用のレシピで作らないとおいしい米粉パンにはならないと言われているのですが、それでは普通の食パンを作るのと同じに作ったらどうなるのかというテーマで卒業研究を展開しました。結果は、米粉だけだと硬くて膨らまないのですが、小麦粉と米粉を適度にブレンドするとモチモチ感のある美味しいパンとなることが分かりました。

ところで、皆さんはカレー大好きですよね。それこそスーパーに行けば、たくさんのカレールウの素が売ってますね。
でも、ルウによってトロミ具合はずいぶん違いますが、それを粘度計という測定機器を使って客観的な数値で表すことに取り組んでいる研究グループもいます。

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図3は、簡単に言ってしまえば、鍋に入れたカレールウをかき混ぜ、そのときの回す力が時間とともにどう変化していくのかを見たものです。
ルウの種類によってトロミ具合(縦軸の粘度のことです)がずいぶん違うことが分かるでしょう。でも、それを口に含んでみると、製品Cのトロミが少ないことは識別できるのですが、その他の製品の区別はつかないという結果が得られました.人間の感覚が、必ずしも機械で得た結果通りにはならないということで不思議ですね。それと、回しているうちにルウの粘度が下がってくることも分かりました。皆さんも、自宅でカレールウをかき混ぜ続けてみてください。時間とともにかき混ぜやすくなるかもしれません。

 

 

 

 

私の研究室では、こんな身近な食べ物の不思議について、日々研究しています。
皆さんも、私たちといっしょに食品の不思議を探求してみませんか?

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研究室のメンバーと