今春より着任しました、遠藤寛子です。専門は、臨床心理学・社会心理学です。特に、怒りの維持について研究しています。
怒りは、一旦は収まったとしても、何かのきっかけでぶり返され、長引きやすい感情でもあります。すると、普段なら気にも留めない些細な一言が気になり、別の新たな怒りを呼び込むこともあります。ですから、小さな怒りが拡大していく前に、怒りを落ち着かせることは、心を健康に保つためには非常に重要になります。
怒りが長引くのは、過去の出来事に対して「自身の目指すべき方向に沿って解決されていない、受容できない、脅かされる」という「思考の未統合感」が残存しているためです。これにより、過去の場面を頭の中で堂々巡りするといった思考が制御できず、怒りが維持されます。また、この未統合感から逃れるために、別の対象に注意を向けようとするものの、かえって堂々巡りの思考が増えてしまい、逆に怒りが維持されることもわかっています。つまり、思考を未統合(未整理)のままにしないこと、これが重要な鍵になります。
では、どうすればよいのでしょうか?従来の研究では、セラピストのような訓練を受けた人々に話すことは有効であると示されています。ただ、いつでもどんなことでもセラピストに相談する…というのも現実的ではありません。
そこで私は、Pennebakerという研究者が提案した方法をベースに、「構造化筆記開示法」という新しい方法を提案しています。怒りと向き合い、それを言葉として紡ぎながら、新たな視点に気づくという方法です。これを通して、思考を統合することで、怒りが収まることもわかってきました。
さらに最近は、この方法をもっと多くの人々に使ってもらうべく、小学生にも適用可能な教育プログラムを検討しています。心理学のみならず、国語の専門家のご協力を得ながら、小学校での実践研究を進めているところです。こうした私の研究も授業で紹介していきます。