児童教育学科 准教授 板橋夏樹

みなさんこんにちは。
児童教育学科の板橋夏樹と申します。主に小学校教員を志望する学生を対象にした理科教育に関する講義やゼミを担当しています。

理科は「オドロキと発見」の世界!

小学校の先生にとって「理科は教えるのが難しい教科だ」というデータがあります。それはなぜでしょうか?そこには大きく2つの理由があるようです。

1つ目は、小学校教員志望の学生がいわゆる理・数が不得意な「文系」出身であることです。苦手意識をもったまま小学校教員となれば、おのずと理科を教えることを避けるようになるのは当然ですね。

 

2つ目は、理科の観察や実験の準備が大変であるということです。皆さんがご存じのように、理科の授業ではさまざまな器具や薬品を取り扱います。子どもに安全に楽しく活動をさせるためには、入念な事前準備が必要です。

その他、理科を教える際に重要なことがあります。
それは子どもが自然の事物現象に対してどんな点に誤解をしやすいのかをよく把握しておかなければならない、ということです。

例えば天動説。数年前のある調査で、未だに小学4~6年生の約4割が「太陽が地球の周りを回っている」と考えていることが明らかになりました。空を見上げれば太陽や月がグルグルと回って見えるのですから当然です。(皆既月食の様子:大学構内で撮影(撮影者:板橋,2014.10.8))

 

教師はこのような子どもの考え方を踏まえた上で有効な授業を行わないと、彼らの考えを変えることはできません。また、国際調査によれば他国に比べて日本の子どもの「理科は好きだけど大切ではないし、将来自分に役立つとは思わない。」という傾向が大きいことが問題となっています。知識基盤社会,科学技術社会と呼ばれる日本としては大変な問題です。

 

ですから、理科教育に関する講義では、これらの実態を踏まえ、まずは学生自身が理科を好きになり、自信をもって教えることができるようになってもらえるような授業を構成しています。子ども達は理科を「オドロキと発見」に満ちた教科としていつも楽しみにしています。ですから、教える側も同じ気持ちで授業に臨まなければもったいない!

児童教育学科の3・4年生は、それぞれの先生のもとで少人数制のゼミに参加し、1人1テーマで研究を進めます。私のゼミ(理科ゼミ)では、学生の卒業研究が出来るだけ卒業後の教育界で役立つような実践的なテーマを考えさせます。例えば小学校理科に関する教材開発、環境教育の要素を取り入れた理科授業、他国と日本の教育方法の比較などです。

 

「エネルギー」をどう教えたらいいか?

ではここで、私の主な研究内容を少しご紹介しましょう。平たく言えば私の研究テーマは「子ども達にエネルギー概念をどのように教えたらよいか?」というものです。理科学習の中で力やエネルギーは見たり触ったりすることができない抽象的な“もの”です。

特に震災以降「省エネ」という言葉を含め日常生活の中ではよく使われる「エネルギー」。

ですが、日本の理科では、エネルギーという用語は中学3年生で初めて定義され、実はそれだけ定義するのが難しい言葉なのです。
日本では学習指導要領という決まった方針に沿って授業が行われます。教科書は検定を受け、その使用義務があります。日本で教育を受けてきた私たちにとってそれは当たり前に思えます。けれど国が違えばその教育方法も違います。国によっては、統一した教育指針がなく、教科書の検定もなく、その使用も教員の裁量に任されたところもあります。

例えば、あるアメリカの理科の教科書を例に取ってみるとその質と量に圧倒されます!ある教科書会社の小学校3年生の教科書(写真参照)は約500ページ、重さ約2kg(対して日本の小学校3年生の教科書:平均約130ページ,重さ0.4kg)もちろん書かれている内容も大きく違います。そこで私は、主にアメリカやイギリスのエネルギー概念に関する教育方法の違いに注目し、どのような方法で行えば小学校段階からエネルギー概念を授業に取り入れることが出来るのかを研究しています。

左の写真:日本の教科書(右)とアメリカの教科書(左)の比較
右の写真:アメリカの教科書の中身

宮城学院で「オドロキと発見」を!

児童教育学科では、実践力を備えた教員になるために必要な充実のカリキュラムが用意されています。本学科が設立されて7年になりますがこの春に卒業した学生を含め教員になった者が100名に達しました。 みなさんも宮城学院女子大学で「オドロキと発見」に満ちた4年間、大きく成長できる4年間を過ごしてみませんか!?きっと素晴らしい毎日が待っていますよ。