心理行動科学科の友野聡子です。
専門は社会心理学で、「社会的迷惑行為」を研究しています。
みなさんは、迷惑なことをされた、あるいは、迷惑なことをした経験はあるでしょうか。並んでいた列に割り込まれた、ゴミを分別せずに捨ててしまった、などなど、挙げればきりがありませんね。私は、そうした迷惑な行いである社会的迷惑行為を抑止する方法を研究しています。おそらく、私自身が人に迷惑だと注意するのが苦手なので、良い方法を模索しているのだと思います(苦笑)。
北風と太陽と私の研究
ところで、「北風と太陽」という物語を聞いたことがあると思います。手荒な手段で旅人のコートを脱がせようとした北風とは対照的に、あたたかく照らして自然と旅人のコートを脱がせようとした太陽が勝負に勝った、という話ですね。
なぜここで突然、北風と太陽の話が出てきたかというと、私の研究の発想が、この物語に似ているという話がしたかったからです。たとえば、マンションの上の階の住民が夜中に掃除機をかけるのでうるさく、迷惑だと思ったとしましょう。そのことを注意するとき、北風のように、「うるさくて迷惑です、やめてください」と荒々しく言ってしまうと、反感を買ってかえって事態を悪くしてしまう危険性があります。挨拶がてら手土産を持って行き、やんわりと迷惑であることを伝える太陽の方法を取れば、お互いの心がほぐれて良い方向に向かうと考えられます。このようにやさしく注意する太陽の方法が社会的迷惑行為を抑止するにあたって効果的かどうか、それが効果的になるときにはどのような心の働きがあるのか、といったことを研究しています。
▼北風と太陽
太陽の貼り紙と授業での取り組み
「トイレをきれいに使用していただきありがとうございます」という感謝の貼り紙も、先ほど述べた太陽の方法の一つと考えられ、着目しています。心理行動実践セミナーという心理行動科学科1年生向けの授業では、今年度、感謝の貼り紙も含めた街中のさまざまな貼り紙を記録し、心理学的に分析する計画です。
▼昨年度の心理行動実践セミナーのある班の実験風景(左)と一部の実験結果(右):貼り紙の配色や文字の種類が変わるとゴミの分別率が変わるかどうかを見ました。
学びのワクワク
私が高校生のとき…もう10年以上前ですが、ある先生にこんなことを言われました。
「大学での学びが、本当の意味での学びだ。」
この言葉を噛みしめるように、大学での学びを楽しみ、ワクワクしながら研究・教育活動を進めてきました。最近は、自身の研究・教育活動以外にも、量刑判断の研究や、非行少年たちのゆがんだ認知に関する本の翻訳、東北地方の心理学研究者が集う研究会の立ち上げなどにも参画しています。ここでも新たなワクワクがあります。
▼量刑判断の研究の発表風景(左)と翻訳に携わらせていただいた本(右)
「迷惑」と言えない弱気さが、学びのワクワクに変わることもあるわけです。みなさんには、どんなワクワクが待っているでしょうか。