幼児教育専攻の教員が、リレー方式で担当している附属森のこども園の園だより10月号のコラムを紹介させていただきます。10月号は、伊藤哲章先生のコラムです。
立ち止まる時間も、大切な一歩
幼稚園時代、私は体調を崩しやすく、よく「おなかが痛い」「頭が痛い」と言っては幼稚園を休んでいました。なぜ幼稚園が嫌だったのか、今となっては覚えていません。ただ、どうしても休みたいという気持ちが強かったのでしょう。そんな私を母親は、なんとか幼稚園に行かせようとして、幼稚園の近くにあった消防署で消防車を見せる約束をし、登園した日も度々ありました。
卒園式の日、担任の先生から「小学校に行ったら休まないようにね」と声をかけていただきました。先生の言葉は、そのときの私にとってとても重く響いたのを覚えています。小学校入学後、理由はわかりませんが、両親は「学校を休ませない」という方針に変わりました。体調が悪くても朝の会だけは出席し、早退することもありました。そんな日々を過ごすうちに、不思議と体は丈夫になり、体調を崩すことが少なくなりました。結局、小学校6年間は無欠席、そして中学校、高校の6年間は無遅刻・無早退・無欠席で皆勤賞をいただくまでになったのです。幼稚園の担任の先生は、この変化にきっと驚かれたことでしょう。
お子さんが園を休みがちで、悩んでいらっしゃる保護者の方もいるかもしれません。でも、お子さんの体調は成長とともに変化するものです。無理のない範囲で様子を見守ってあげてください。
あの頃の私が、今では小学校時代の幼なじみとマラソンを始め、今月は会津若松のハーフマラソンに出場します。幼稚園を休んでばかりいた私が、自分の足で走り続けている。そう考えると、休んでいた時間も、未来へつながる大切な一歩だったのかもしれないと思えてきます。
「大丈夫、きっと、この子のペースで成長していく」と信じて見守ることが、大切なことではないでしょうか。
宮城学院女子大学教育学部 伊藤哲章