園だよりを通じた附属森のこども園との連携:9月のコラム紹介

幼児教育専攻の教員が、リレー方式で担当している附属森のこども園の園だより9月号のコラムを紹介させていただきます。9月号は、尾形良子先生のコラムです。

小さな喪失

朝、通勤のためにバスに乗って宮城学院前まで来ています。
普段はバス通勤を意識したことがなかったのですが、先日、乗車していて気持ちが悪くなってきました。運転が荒いのです。着くまでの時間が長かったこと!
久しぶりに乗り物酔いが酷くて、バス利用の遠足や見学会が苦手だった子どもの頃のことを思い出しました。酔い止めの薬を飲み、最後列で騒いでいる、いつもの遊び仲間と離れて最前列に乗るしかない。到着するとホッとしてフラフラしながら降り立った時の安心感・・・。あれ以来のことでした。
突然気が付きました。これまでバスで通勤していることを意識もせずに済んでいたのは、乗客に苦しみを与えないような上手な運転をして下さった運転手さんたちのお陰だったことを。通勤時はその日の予定などに忙しく思いを馳せながら、運転手さんへの感謝の気持ちは全くなかったのです。
最近人口減少もあり、各地でバス路線の廃止や縮小が相次いでいるようです。そういえば、高齢の母は「バスの運転手さんの経験不足か、最近のバスの運転は荒くて、車中で倒れてしまったんだよね。皆、バス運転手の質が低下していると言ってるよ」と話していました。
失ってはじめて理解できる、これまではあった有難いこと。運転を上手にして下さった運転手さんたち、直接お礼を伝えられなくて申し訳なかったのですが、本当に有難うございました。本当は小さくなんかない喪失です。

宮城学院女子大学教育学部  教授 尾形 良子

長沼さん写真