園だよりを通じた附属森のこども園との連携:7月のコラム紹介

幼児教育専攻の教員が、リレー方式で担当している附属森のこども園の園だより7月号のコラムを紹介させていただきます。7月号は、石川隆先生のコラムです。

足の親指の力

私は、小学生の時から足が遅い方でした。中学生の時は、私よりも遅い生徒が一人いたので、後ろから2 番目でした。どうすれば足が速くなるのか、本を読んだり、速い人にコツを聞いたり、走り方を真似したりしましたが、あまり効果はありませんでした。ある人からは、普段からつま先立ちで生活すると速く走れるようになると言われたので、試してもみました。腿を高く上げて走ると良いと聞くと、それも試しました。前傾姿勢で走ると良いと言われ、実践してみると、女子からモグラみたいだと笑われてしまいました。高校生になって野球部に入り、おまえは体が小さいので内野手は無理だ?と言われ、外野手(ライト)になりました。相変わらず足は遅かったのですが、出だしの速さと勘の良さで何とか選手としてやっていくことはできました。

その後は、しばらく走る機会はありませんでしたので、足が遅いことはいつの間にか保留のままになっていました。しかし、つい最近になってまた、なぜ自分は早く走れなかったのか気になり、その原因を考えてみるようになりました。そして、もしかしたら自分は足の親指の力が他の人よりも弱かったのではないかと考えるようになりました。かつてつま先立ちで生活すると良いと言われたのは、この足の親指を鍛えることだったのではないか、そしてその時の自分は、親指を鍛えるためという自覚が全くなかったので、その訓練の効果が十分に生かされなかったのではないかと思いました。

最近の子どもたちや若者たちは、足の親指をきちんと使って歩いたり走ったりしているのでしょうか。最近の靴は、ひざや足首の関節保護のため、靴底が厚くクッション性の高いものが多いように感じます。このような靴は果たして足の親指の力を有効に使えるのでしょうか。近年、老人が転倒して大腿骨を骨折するという話もよく耳にするようになり、足の親指の機能低下がその原因の一つなのではないかと考えています。子どもの時期から足の親指を鍛える機会を増やして、無意識に足の親指の力を十分に使って歩いたり走ったりできるようにしてあげることが、老後の転倒防止にもつながるような気がしています。

宮城学院女子大学 教育学部 教授 石川 隆
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