研究活動上の不正行為に係る調査結果及び対策について

研究活動上の不正行為に係る調査結果及び対策について

 

 この度、本学教員が発表した論文について、「宮城学院女子大学における公的研究費による研究活動に関わる不正行為防止に関する規程」(以下、「学内規程」)に基づいて調査した結果、不正行為と認定いたしましたので、同規程の定めにより公表いたします。
 

1.不正行為被認定者の氏名・所属

李 敬淑(イ ギョンスク) 宮城学院女子大学 学芸学部 准教授

 
2.不正行為の内容及び不正行為判断の根拠
 被認定論文は、引用であるとする適切な記載が認められず、「他の研究者の研究手法、研究成果を当該研究者の了解、または適切な表示なく流用したもの」によって、研究上の不正行為である「盗用」が行われたものと認定した。
 先行論文と被認定論文とを比較分析した結果、被認定論文には、先行論文と一字一句完全に一致する箇所を含め、極めて類似する表現が多数含まれている。その表現方法の類似性と記述内容の同一性は、偶然の一致と見なすことができるレベルをはるかに超えており、被告発者が先行論文を参照して作成したことを強く推認させると言わざるを得ない。
 被認定論文以外の論文の引用記載を参照したところ、引用箇所の出典不記載は認められなかった。このことを考慮すると、本件は被告発者の不注意や研究倫理に関する理解不足に帰する可能性は極めて低く 、被告発者は先行論文の記述を故意に盗用しているものと判断せざるを得ない。
 
3.本学が公表までに行った措置の内容
 学外者から盗用箇所があるとの告発を受け、学内規程に基いて学長が不正調査委員会を設置した。不正調査委員会の予備調査の結果、本件について本調査を行うことが適切であるとの審議結果に至り 、外部調査委員3名を含む調査委員会にて、より詳細な調査並びに被告発者に対する弁明機会の付与を含む本調査が行われた。
 本調査の結果、不正調査委員会は、調査対象論文に「特定不正行為(盗用)」があったと認定した 。
 宮城学院は、これを受け、被認定者に認定結果を通知した。
 認定結果に関し被認定者から不服申し立てがなかったため、宮城学院は同規程並びに「宮城学院就業規則」及び「宮城学院懲戒手続きに関する規程」に基づいて以下の2点の措置を課すことを決定し、被認定者に通知した。

(1)被認定者を「懲戒処分(停職1か月)」とする。
(2)被認定論文の取り下げを勧告する。

 
4.不正調査委員会の氏名・所属

委員長 戸野塚 厚子 宮城学院女子大学教育学部 教授(副学長)
委員 今林 直樹 宮城学院女子大学学芸学部 教授(学芸学部長)
委員 深澤 昌夫 宮城学院女子大学学芸学部 教授(日本文学科長)
委員 小田中 直樹 東北大学大学院経済学研究科 教授(外部有識者)
委員 芳賀 満 東北大学高度教養教育・学生支援機構 教授(外部有識者)
委員 岩渕 健彦 エール法律事務所 弁護士(外部有識者)

 
5.調査の方法・手順
 調査の手順については学内規程に従い、次の通り行った。
(1)告発内容の確認
(2)予備調査結果の確認
(3)本調査の方針確認

 調査の方法については次の通りとした。
(1)被認定論文、研究ノート、研究データ等の取集と分析
(2)被認定論文の元となったシンポジウムの音声記録、配布資料、スライド資料の検討
(3)先行研究(論文)と被認定論文との比較分析

 本調査に当たっては被告発者に十分な時間を与え、弁明書の提出を求めた。
 弁明書は不正調査委員会で審議された。
 なお、本調査において、被告発者が過去に応募制限の措置や被認定論文以外に不正を行ったことがないことを確認した。

 
6.再発防止策
 本学は、発生要因を踏まえ、次の3項目を研究不正防止強化の要点とする再発防止策を講ずることとした。

(1)本学における研究倫理教育の強化

①大学に所属する全専任教員等を対象として実施する(実施主体:学術情報センター)
(ア) 研究倫理教育として実施してきた研究倫理研修会やコンプライアンス研修会を整理統合し、現在、科研費の申請者に限定されていたり、3年に1回が義務付けられていたりするなどの体制を改め、全専任教員に1年1回以上の受講を義務づける。
(イ) 研究倫理に関わる啓発活動を1年に4回以上実施する。
(具体的には、研究不正の事例の紹介等、研究倫理に関わる情報の提供をメール等で実施する)

②研究所に所属する全所員を対象として実施する(実施主体:各研究所)
研究所の共同研究活動、紀要の発行、さらには、所員の研究倫理教育について、研究所に義務づける。これにより、大学として実施する「2.投稿におけるチェックリスト作成の義務化」に加えて、それぞれの研究所の研究領域・活動の特色等を踏まえた研究所独自の研究倫理教育の計画と実施が可能となる。
(具体的には、1年1回以上、全所員(客員研究員を含む)を対象とした1回30分以上の研究倫理教育の実施を研究所に義務づける。)

 

(2)投稿におけるチェックリスト作成の義務化(実施主体:各研究所および紀要編集委員会)

 本学教員が論文を投稿するに際しては、当該研究の計画から論文執筆までのあらゆる段階で、研究不正に該当するような行為がないかどうかの自己確認を行い、そのチェックリストを各自が保管する。とくに本学紀要への投稿については、このチェックリストを研究所および紀要編集委員会へ提出することを義務づける。
(具体的には、全学の共通チェックリスト※ を本学独自に作成し、投稿時にその提出を著者に義務づけ、内容の確認を研究所に義務づける)
※当該チェックリストに、無料で使用できるコピペチェッカーを用いたセルフチェックの結果を含める。

 

(3)研究不正防止委員会の学術情報センターの外部委員会化(規程改訂)

 研究不正防止活動を含む研究倫理教育においては、現行の規程においては、学術情報センターと研究不正防止委員会が重複し、かつ、独立して担当することになっている。学術情報部長が両組織の長を兼務しているとはいえ、研究倫理教育の立案から実施までを一貫して組織的に扱うことは研究不正防止においても重要である。したがって、学術情報センター規程を改訂し、研究不正防止委員会を学術情報センターの外部委員会として位置付けることとする。

 

 なお、上記の「(1)本学における研究倫理教育の実施」及び「(2)投稿におけるチェックリスト作成の義務化」は、2022年4月から実施することとし、「(3)研究不正防止委員会の学術情報センターの外部委員会化」については、2022年3月中に規程を改訂し、2022年4月から施行する。

 

以上

宮城学院女子大学