本日の特別講師、佐藤寛泰先生はまだ二十代の若手能楽師。
舞台で使われる本物の能面をご持参いただきました。
実際に能面をつけるという、この上なく貴重な体験にドキドキ興奮状態の学生たち。
日本文学科の2年生が受講する「日本文化史」。今は能・狂言について学んでいます。が、実際に見たことのある人は少ない。興味はあってもなかなかチャンスがありません。
でも、日本文化の豊かさや深さを学ぼうとすれば、やはり本物に触れるに如かず。
というわけで、今回は若手能楽師の佐藤寛泰さんをお招きしてお話をうかがうことに。
佐藤先生は、仙台藩お抱え、能楽喜多流・佐藤家の12代目。
普段は東京を拠点に公演活動などをされています。
きりりとした袴姿の佐藤先生が現れると、100人近い学生たちもピリッと引き締まった雰囲気になりますね。
さて、袴姿には少々不釣り合いなアルミケースから先生が取り出したのは、能楽のシンボルとも言うべき能面でした。
「今日は女子大に来るということで、女性の能面を持ってきました」
十代の女性を表しているという「小面(こおもて)」、二十代半ばの女性の面「曲見(しゃくみ)」、表情も険しい「橋姫(はしひめ)」、そして一般にもよく知られている「般若(はんにゃ)」と、4つの面を披露。
「能の中で、角が生えるのは女性だけ。それだけ女性は恐ろしいとされているんですね」
ええー? ……能の世界の話です。
今回は特別に、特別に、特別に! 希望する学生に能面をつけさせていただきました。
目の部分に開けられた穴から見える視界は想像した以上に狭く、「こわい」「歩けない」「この状態で舞を舞うなんて!」とみんなびっくり。
また、木製の面は「思ったより重く、姿勢をキープするのは大変」「自分の息がこもって暑かった」などなど、体験しなければわからないことも、いっぱいありますね。
さらに、能楽の“バックコーラス”となる地謡(じうたい)にも挑戦しました。
歌詞に簡単な記号?が振られただけの「楽譜」に戸惑いながらも、先生の朗々と響く声に合わせて、生まれて初めて謡(うたい)を体験しました。演劇部に所属しているという学生は、プロの舞台人の声を間近で聞き「とてもいい声で、カッコいい!」と感激しきり。
最後には佐藤先生への質問コーナーがあり、能楽師の舞台裏や日常の様子など、興味深いお話をたくさん伺うことができました。能楽師って、一回の公演で4〜5kgも体重が落ちるって知っていました?10kgもの衣装を身につけて一時間半も演じていると、それくらい汗になって出て行ってしまうのだそうです。
「身体を張っています」と言う佐藤先生の笑顔に、プロの矜持が垣間見えました。
1コマ80分ながら、「本物」との出会いは確実に学生の心を動かした様子。「日本文化史」の授業は歌舞伎や能、文楽の観劇も予定されており、学生たちも今回の特別講座を受けて「実際の舞台を見るのが楽しみ!」と、ますます期待が高まったのでした。