OG/社会人向けリカレント教育プログラム第3回講座『デンマークの教育とジェンダー~「こそだて」事情から考える~』を開催しました

「リカレント(学び直し)」の連続講座第3回講座が2024年9月10日に行われました。

今回はデンマーク在住の高橋まゆみ先生(前バァナオップ・ホイスコーレ・インターナショナル・コーディネータ)を講師としてお迎えし、リカレント初の試みとして、現地をオンラインで繋ぎ、また時差を考慮して夕方の時間帯に開催いたしました。
第一部としてご参加の皆さまとの交流会、そして第二部として講演が行われ、のべ20名の皆さまにご参加いただきました。遅い時間帯にもかかわらずお集りいただきました皆さま、ありがとうございました。

講演に先立ち、第一部交流会での丹野久美子キャリア支援部長による挨拶で開会。「ライフ・キャリアに焦点をあてたリカレント教育、宮城学院女子大学らしいキャリアの構築として、やがては、学生達のキャリア教育、そして社会で活躍あるいは社会で何をしようかと考えている卒業生と市民女性をうまく繋ぎたいというのが、この会の始まりです。初めてのオンライン開催ですが、ざっくばらんに意見交換させていただければと思います。(丹野キャリア支援部長/食品栄養学科 准教授)」
その後ご参加の皆さまとの交流の時間が設けられ、ウェルビーイング・ウェルフェアが社会全体で豊かに紡がれている北欧と日本との違い。日本での男女の働き方格差。女性の貧困と児童虐待。女性をめぐる社会の仕組みの在り方。シングルマザーの選択と子育ての文化、など。さまざまなテーマについて積極的に、また温かな雰囲気の中で意見交換が行われました。

 

暗闇が美を創造する幸福な国

北欧独自の教育機関であるフォルケ・ホイスコーレ(Folke Højskole)。
入学試験やテストによる成績評価もなく、幅広い教科から自由と責任のもとで授業を選択し、自分自身の中で評価を行うしくみです。「人生いかに生きるかを学ぶ学校」として、寄宿制のもとで生活しながら対話と経験を通して共同と連帯を学び、デンマーク流の民主主義・デモクラシー教育の基盤を作るものとされます。
デンマークは、子どもの教育費や老後の医療費など社会保障の負担感がなく、セーフティネットが担保される安心感から、「幸福な国」とも呼ばれる国です。そして子どもは個人ではなく、社会の中で育てていくという考えが浸透している国でもあります。

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対話

デンマークの民主主義教育は幼稚園児から始まります。
自然の中での遊びは、身体感覚を通して経験する学び。子ども同士や大人の「模倣」、子ども同士の「対話」を通した学び。
共同作業を通して共生や連帯の心を育み、助け合い、分け合い、仲間への思いやりを通して、自分と他人の存在を体験していきます。
北欧神話での争いの解決方法は「対話」でした。フォルケ・ホイスコーレでも常に他者との対話や生きた言葉が大切にされ、全ての人が対話に参加できる雰囲気づくりがなされているといいます。

 

『The tree of life』/『人生の木』

木の「根」は過去の自分。家族や友人、大切な人、大切なもの、嫌だったこと。
木の「幹」は現在の自分。
木の「枝や葉」は未来の自分。将来の夢や希望を表します。

♬『Livstræet』♬
♪この世界にはストレスが渦巻いている
♪それらは悲しくそして灰色の一日にする
♪そのハッピーじゃない人たちに会い
♪ただ歩み、立ち止まるだけでいい。
♪その人たちを人生の木のてっぺんに座らせましょう
♪人生は素晴らしいとその人たちが感じられるように…
♪青い地平線と大空の門がみえるように…

 

ジェンダー

デンマークと言えば、陶器や家具のデザイン、糖尿病領域の製品サービスを提供するグローバル製薬企業ノボノルディスクファーマ(株)などが有名です。実はほかに、女性の労働参加率が高く、特に福祉部門への女性の社会進出が顕著。2020年2月時点での女性議員の割合は、デンマーク39.7%:21位。対して日本14.4%:147位(191中)。
働く女性の割合が高いこと、さらに、子育てをしながら働く女性の多いことが知られています。

 

子そだて

デンマークでこれだけ子・個育てが意識される背景には、この国が過去に滅びる危機を経験していることにあるのではないかと高橋先生はお話されました。子どもを社会の中で大切に育て、そして個人を一人の人間として尊重する、それが国の繁栄につながるために大切なことだという考えが浸透しているからなのでしょう。
子どもが生まれてから、若者へ、そして働き世代、高齢者世代へと成長を続けるなかで関わる教育、すなわち、家庭教育、学校教育、社会教育、職業教育。それぞれが教育の原点、土台、自己実現、技術継承であり、それらを経て同一の価値観を育む生涯学習の機会となります。さらに、先に生まれた大人による受け皿であり後押しである関わりがあることによって、自由と責任を自覚し、個を尊重し、自立した若者へと「子」を導く教育となるのだということが先生より語られました。

 

**********受講後アンケートより*********

Q.イベントに参加された目的についてご自由にお書きください
・デンマークのような多様性を重んじる教育の文化と日本の文化を比較したいと思いました。
・日々幼児から大学生を相手に仕事を通して日本の教育に疑問があり、この機会に新たな知識を得たいと思った。
・北欧の教育について興味関心があったため。
・よりよい家庭科教育を行うために、世界に隠されている様々なヒントを学びたかったため。
・みなさんとお知り合いになれたらと思い参加しました。
・日本とデンマークの違いを知りたかったため。
・現地からの声を日本人研究者から直接聞くことができる珍しい学びの機会と思いました。

Q.受講の感想をお聞かせください
・デンマークの生活、学校教育についてリアルな実情、感想を聞くことができた。
・素晴らしいレクチャーに感謝します。家族がアメリカからヨーテボリに居住して北欧に縁が出来て以来、その教育事情を更に深く知りたい、というのが私の根からの質問です。・少人数教育について関心があります。そのためにデンマークの教育はとても参考になると思っておりますが、実際の中学・高校の通常クラスにおける少人数教育のメリット、デメリットをお伺いしてみたいなと思いました。 日本では伝統や文化、風土が新たな改革や一歩を阻むところがあると思っています。さらに少子化に加え、発達障がいや不登校、いじめ問題など、取り巻く環境は難題ばかりです。こどもが伸び伸びとした環境で自分らしくいられる場の提供や、安心して登校できる学校運営をしていくために、また、こどもの可能性を最大限に引き出すためにはどのような考え方や環境整備が有効なのか教えていただけますと幸いです。
・ご自身の現地での生活とデンマークの制度、それをどのようにお感じになったのかを率直にお話頂けてとてもうれしかったです。
・まゆみ先生 貴重なお話ありがとうございました。 私は保育園の栄養士をしていて、デンマークと日本のコソダテの違いが気になり、受講しました。 想像以上の違いに驚き、久々に世界は広い!!という感情になりました。ありがとうございます。
・質問ですが、デンマークでは、働いて税金を払うのが当たり前という概念になっていると言うことでしたが、鬱になったりして、就業が難しい場合は、どういう制度があるのでしょうか? なんとなく、日本人は仕事や生活に疲れている人が多くいるように感じるのですが、デンマークの人々はどうですか? ホイスコーレでは、試験や資格を取っては行けないとおっしゃっていましたが、卒業後の就職の保証とか、就職しやすさみたいなものはあるのですか? 語彙力がなく、専門的な質問ができなくてすみません。お手隙の時に教えて頂けたら幸いです。
・今回のレクチャーではデンマークを通した北欧教育を垣間見ることができ大変勉強になりました。企画していただきありがとうございました。
・アットホームな雰囲気がとてもよかったです
・楽しかったです、どうもありがとうございました!
・大変良い企画をありがとうございました。