2021年度学位記授与式 学長告辞

本日ここに、晴れて学士そして修士の学位を授与された皆さん、おめでとうございます。宮城学院女子大学を代表して、お祝いを申し上げます。また、ここに至るまでお子さまを支えてこられた保護者の皆様、心よりお慶びを申し上げます

今日ご卒業の皆さんは、今から11年前、東日本大震災を経験しました。一昨日も大きな地震がありました。大震災から7年、9年の時が経ち、皆さんは宮城学院女子大学あるいは大学院に入学しました。しかし2020年の春、皆さんは突然キャンパスに入れなくなりました。新型コロナ・パンデミックです。そして卒業をひと月後に控えた先月の2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発しました。第三次世界大戦の恐れさえなしとしない緊急事態です。皆さんは若くしてすでに、1,000年に一度の大震災、100年に一度の感染パンデミック、そして77年ぶりの世界秩序の崩壊を経験したことになります。これほどの経験を青年期までに経験した世代はありません。しかし私たちは、今まさに、そのような時代を生きているのです。

次に何が来るか分からない中、皆さんは社会に出たら「答えの見えない問題」を日々解かなくてはなりません。一番大切なこと。それは答えが分からなくても恥ずかしいと思わないことです。誰も答えを知らないのですから、何も恥ずかしがることはありません。今からひと月前、誰がウクライナのこれほどの惨状を予測したことでしょう?

答えは分からない。しかし皆さんは「答えは必ず在る!」と信じなくてはなりません。2014年のノーベル物理学賞は青色発光ダイオードを実現した赤崎勇、天野浩、中村修二の三氏に贈られました。半導体が光ることを最初に予言し、そして実際に赤と緑の光を出して見せたのは私の恩師の恩師である西澤潤一先生です。あと青色さえ出来れば光の3原色が揃ってすべての色が再現できる、と世界の研究者が青色発光ダイオードの開発を競ってきました。しかしどうしても出来ません。ひょっとしてこの問題、答えが無いんじゃないか。そんな空気が生まれていました。そんな中、3人の日本人研究者がGaNという半導体に注目し、とうとう青色発光ダイオードの開発に成功したのです。このニュースが日本から世界に伝わるや否や、世界中で青色が光り始めました。それは、「この問題には答えが在る」ということが分かったからです。この3人がノーベル賞を受賞したのは、答えがないかも知れない不安の中で、答えが在ることを信じて研究をやめなかったからでした。皆さんも「必ず答えはある!」そう信じて進んでください。必ず良いことがあります。

しかしどっちに向かって進んだらよいのでしょうか。そういう時は「根拠のない自信」が大切です。それは恋愛に似ています。恋愛は、「私はあの人が好きだ。あの人も私のことが好きに違いない」と、勝手に思い込むところから始まります。答えの見えない問題を解くのも同じことです。根拠のない自信と山勘を総動員し、答えのありかについて当たりを付けるのです。

答えの当たりがついたら出発です。でもゴールはまだ遥か先。どうやってそこまでたどり着きましょうか。ミヒャエル・エンデの書いた「モモ」という物語を知っていますか? 「時間どろぼうと、盗まれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語」という副題の本です。この本に出てくるベッポ爺さんという道路掃除夫の言葉がとてもいいのです。彼は主人公モモに言います。「なあ、モモ、とっても長い道路を受け持つことがあるんだ。恐ろしく長くて、これじゃとてもやりきれない。」「「こういう時は、一度に道路全部のことを考えてはいかん。つぎの一歩だけ、つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。」「すると楽しくなってくる。楽しければ仕事がうまくはかどる。」「ひょっと気がついたときには、一歩一歩進んできた道路がぜんぶ終わっとる。これが大事なんだ。」ベッポ爺さんのこの言葉には、長い道のりの歩き方のすべてが含まれています。

こうして答えの埋まっている場所に着きました。答えを掘りましょう。みんなで掘りましょう。その方が絶対に楽しいのです。みんなで答えを掘るための最高の道具、それは互いに語り合うことです。これが本当の「しゃべる」です。ここで大切なのは「対話」という名のしゃべるです。対話は、話す前と後で自分の考えが変わることを楽しみます。これに対して議論というのは、話す前と後で考えが変わったほうが負けになります。答えを見つけるのに役立つのは「対話」です。

対話の相手には出来るだけ自分と違う人を選びましょう。本学は2019年、「共生のための多様性宣言」を表明しました。多様性は、それこそ多様ですから、その尊重は大変だと思うかも知れません。そんなことはありません。戸野塚副学長から聞いた素敵な話があります。スウェーデンのあるピザ屋さんがユニセックストイレを作りました。するとお客さんたちからユニセックストイレは入りにくい、前のように男女に分けてほしい、と意見が出てきた。するとそのピザ屋のおじさんは、「僕にはいろんな友達がいます」という見出しのチラシを書きました。「車椅子の男の子を連れて来るお母さんがいます。車椅子に乗ったお父さんを押して来る娘さんがいます。トランスジェンダーの人もいます。僕にはいろんな友達がいます。どの友達も大事にしたい!」このチラシが評判になり、新聞に大きく取り上げられたのだそうです。多様性の尊重はむずかしいことではありません。「私にはいろんな友達がいます。どの友達も大事にしたい!」この言葉に尽きるのです。

皆さんが宮城学院女子大学で学んだことは、今、私が申し上げてきたことに他なりません。答えを知らなくても恥ずかしがらないこと。答えの存在を信じること。根拠なき自信を持つこと。一歩一歩歩くこと。みんなで答えを掘ること。どの友達も大事にすること。長い人生から見れば、皆さんが宮城学院女子大学で過ごした年月は短いものです。そこで学んだ知識も、あるいは限られたものでありましょう。しかし皆さんは「人生の歩き方」を本学で学んだのです。宮城学院女子大学での学びが、皆さんのこれからの長い人生の、豊かな礎となることを心から願いまして、学長からのお祝いの言葉といたします。本日は、ご卒業、おめでとうございました。

 

2022年3月18日
宮城学院女子大学
学長 末光 眞希