本日、入学式を迎えられた皆さん、そして大学院に進学した皆さん、おめでとうございます。皆さんの新しい人生が、この宮城学院女子大学で始まることを教職員一同を代表して歓迎いたします。また保護者の方々におかれましても、お嬢様が大学生または大学院生となった姿をご覧になられて感慨もひとしおのことだと拝察いたします。お慶びを申し上げます。
新入生のみなさんと同じ一八歳の若者は、全国に一一七万人います。昨年の大学進学率は五三%でした。女子学生の割合は四五%ですので、みなさんと同世代の人たちは半分が大学に進学し、大学生の半分近くは女子学生だということになります。
いまからおよそ五〇年前の一九七〇年の女子の大学進学率は五%程度でしたから、この半世紀の間に女子の大学進学率はおよそ一〇倍になっています。それだけ日本社会が豊かになったということでしょうが、みなさんが大学に進学できるのは、こうした大きな社会状況の変化ということだけではなく、みなさんを慈しみ、支えてくださっている保護者の方々の、惜しみない愛情のたまものであるということを改めて認識していただきたいと思います。
いま女子の進学率について触れましたが、宮城学院は日本の女子教育の歴史、とくに東北における女子教育の進展に大きな役割をはたしてきました。
宮城学院の前身である宮城女学校は一八八六年明治一九年に、アメリカからやってきたキリスト教の宣教師によって開設されました。この時代の教育がどのような状況であったのかを少し紹介しておきます。
国によって学校制度が作られたのは、一八七二(明治五)年のことです。男女・身分にかかわらず、すべての子どもたちを小学校に通わせることが定められました。しかしそれから二〇年後の一八九三年(明治二六)年の男子の就学率は七〇%、女子は三〇%でした。女子の就学率は男子の半分以下ですので、多くの家庭で男子を優先して学校に通わせたことがわかります。まずは男子に教育をほどこすという、この時代の考え方が反映しています。
一九〇〇年(明治三三)には義務教育の授業料が無償になりますので、それからは就学率が急速に高くなりました。無償化して一〇年後の一九一〇年代(大正年間)には、男女ともに就学率が九五%を越えています。こうした経緯をみると、男女共に学ぶべしという国家の方針がそれなりに定着するまでにおよそ四〇年かかっています。一方では、わずか四〇年にして九割を越える子どもたちに教育の機会を与えた日本という国の底力も感じさせます。
では、これで男女が共に学ぶ教育制度が完成したのかというとそうではありません。一八七九年(明治一二)に、小学校の上の学校として、男子は中学校、女子は女学校が設けられましたが、公立の女学校は極めて少なく、男子の中学校を中心に整備が進められていきました。
こうしたなかでキリスト教の宣教師たちが女子教育に果たした役割は、極めて大きいといえます。明治の初めから明治二〇年代までの間に、キリスト教系の女子校が全国各地に次々に開学されていきました。現在でも女子校にミッション系が多いのはそのためです。なぜキリスト教は女学校を積極的につくったのかといえば、神の前に人はみな平等、男女は共に平等であるという考え方にもとづき、教育の機会を平等に与えようとしたのでした。
宮城学院が明治の日本に生まれたのは、まさに日本の女子教育を充実させ、高めていくためでした。だからこそ、第二次世界大戦後に社会が民主化されて教育制度の改革が行われると、宮城学院は一九四九年(昭和二四)にいち早く女子大学を開設したのであります。宮城学院は、一貫して高等女子教育のフロントランナーだったということができます。
現在、男女共同参画の時代だと言われているように、社会は、あらゆる場面で女性の力を求めています。女性の力が最大限に発揮されてこそ、日本は元気になります。天の半分を支えているのは女性です。教育こそ女性の力を高めるという強い信念があったからこそ、宮城学院は女性のための教育機関として一途に歩んできました。
宮城学院女子大学を開学してから、今年はちょうど七〇年目にあたります。七〇周年を期に宮城学院は、女性のための大学として、さらに磨きをかけてまいります。
そして皆さんは、これからの大学生活において、自分が何を目的に、どのように生きていくのかということについて真剣に考えていく必要があります。みなさんは本学に入学するにあたって、それぞれに学部学科を選択しました。そのことは、どのように生きていくのかということについての、一つの選択でした。だからこそ、それぞれの学部学科での学びに真剣に取り組み、しっかりとした教養と専門知識を身につけていかなければなりません。
変化が激しい社会であり、自分の将来も見極めがたい状態であるからこそ、探求力や思考力を身につけ、状況に応じた的確な判断ができるような力を身につけていってください。
そしてこの大学で、多くの友人を得てください。夢や希望を語り合い、悩みを打ち明け、共に考えてくれる友人は、これからのみなさんの人生の、かけがえのない宝となるでしょう。大学時代の友人こそ生涯の友になったという人は、たくさんいます。大学は学びの場であると共に、友人たちと切磋琢磨して人格を磨き、人生の基礎をつくる場でもあります。
みなさんは未来を創造する力をもっています。宮城学院というこの学び舎で、みなさんは先人が築き上げてきた学問を学び、それをさらに発展させ、新しい価値と価値観を創造していってください。
本学での学びや学生生活をとおして、皆さんが自己を確立した、凜とした女性となっていくことを心から期待して、私の式辞といたします。
本日は御入学、おめでとうございました。
2019年4月4日
宮城学院女子大学
学長 平川 新
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