【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の7

【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の7

深 澤 昌 夫(日本文学科 教授)

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仔猫もだんだん大きくなってきた。さすがに、いつまでも家の中だけでは物足りない。しかも、男の子だけあって好奇心旺盛。お外が気になって仕方がない。
だが、家の外には危険もあるらしい。

「玉ちゃん、ワン/\が来るから、うちへお帰りよ」

市中には犬たちも多く暮らしていて、野良はもちろん、飼い犬であっても基本は放し飼い。猫が犬にかみ殺されることもままあったようだ。

心配して声をかけてくれたのは、梅の花をあしらった振袖を着て、朝顔柄の前垂れをかけ、底の厚いぽっくり下駄を履いているお姉さん猫。髪を結っているわけではないが、その額にリボン状の赤い髪飾り、いわゆる「ちんころ」を垂らしている。今でも七五三などで見かける女児の装いである。

ところが、うちの玉ちゃんは、お姉さんが止めるのも聞かず、「わたい、おんもがいいよお」と言って、そのまま外に出てしまう。

ちなみに、玉ちゃんの「おかかがいいよお」とか「おんもがいいよお」といった口調には、子ども特有の可愛らしさと親しい人に甘えている感じがよくあらわれている。

その玉ちゃんは「食い初め」では赤ん坊らしく涎掛け姿だったが、本図では少し大きくなって、着物の上に腹掛けをしている。着物は幾何学的で直線基調の麻の葉模様である。

こうした麻の葉模様は歌舞伎や浮世絵などでよくお目にかかる。麻という植物は成長が早く、害虫などにも強いところから、子どもの健やかな成長を願い、魔除けの意味も兼ねて産着などに用いられてきたのだという。

この双六は、いわば芳藤版「うちのタマ」の誕生から成長、そして猫たちにありがちな様々な試練と体験を描いていくことになるのだが、育ち盛りの遊び盛り、好奇心旺盛な玉ちゃんはこの後いったいどうなるのだろうか?

<其の8へ続く>