【連載】歌川芳藤「膝の上猫の寿古六」(東京都中央図書館蔵)を読む 其の6
深 澤 昌 夫(日本文学科 教授)

猫はよく眠る。睡眠時間は平均14~20時間といわれている。つまり、猫は一日の大半を寝て過ごす生き物なのである。とはいえ、「よく寝る子だからネコ」という語源説はあくまで冗談であろう。
さて、本図には直前のコマと同じ障子、同じ縁側が描かれており、猫のいる部屋が裏庭に面していることがわかる。しかも、庭には飛び石が敷かれ、庭木も植えられていて、やはりそれなりに裕福な家庭のようだ。
仔猫はお腹もいっぱいになり、お姉さんにいっぱい遊んでもらって、縁側でひなたぼっこをしている。
ここにいれば食べることも、寝ることも、何の心配もない。まかり間違っても、犬なんぞに襲われる心配もない。なんて幸せな人生(猫生?)だろう。
そうして仔猫が座布団の上で、のんびり、ウトウトしていると…
おや、蝶が飛んでいる。アゲハ蝶のようだ。つい気になってその行方を追う。すると、その視線の先に赤い花が咲いている。アゲハの仲間は赤い色が認識できるので、赤い花に引き寄せられていくのである。
本図では庭木の種類までは特定できないが、猫と相性のよい「赤い花」といえば牡丹である。
牡丹は中国で「花の王」とされており、猫(マオ)が七十歳を意味する耄(マオ)、蝶(ティエ)が八十歳を意味する耋(ディエ)に通じるところから、「猫と蝶と牡丹」の組み合わせは、古来「長寿と富貴」のシンボルとして吉祥画の画題とされてきた。
それはそうと、画面右下に平たい箱がある。砂のようなものが入っている。箸のようなものも見える。これは? …そう、猫のトイレである。
国芳の『朧月猫の草紙』にも同じような砂箱が描かれており、猫を飼う家々ではこうしたトイレを用意し、排泄のしつけをしていたことがわかる。
<其の7へ続く>
