「夏の怪談教室―怪異と幻想の日本文学Vol.4」を開催しました

kai2019

猛暑という表現がふさわしい真夏の一日となった7月27日(土)、日本文学科公開講座「夏の怪談教室―怪異と幻想の日本文学Vol.4」が仙台市市民活動サポートセンターにて開催されました。今年もまた、学都仙台コンソーシアム・サテライトキャンパス公開講座2019の一環として開催され、会場もほぼいっぱいになりました。暑い中、多くの方々に足をお運びいただきまして、まことにありがとうございます。

先ずは東北工業大学ライフデザイン学部准教授の猿渡学先生が「ホラー映画の比較文化論」と題しお話しされました。ワークショップで「怖さ」を自己分析したあと、心理学的観点から「怖さ」のメカニズムについて学びました。条件付けがいかに重要であるか、勉強になりましたね。また、編集技法の観点から「怖さ」についても教わり、ソビエト連邦(ロシア)の映画作家・映画理論家のレフ・クレショフが発案したクレショフ効果についても学びました。実際に映像を観ることで確認することもできました。

猿渡先生はホラー映画の定義や歴史、パターンについても詳しく教えてくださいました。洋画と邦画の根本的な違いは納得でしたね。先生から教わったことを念頭に入れながら、この夏、ホラー映画を鑑賞してみるのも良いのではないでしょうか。新たな視点で観ることができそうです。

続いて本学教授の深澤昌夫先生による「泉鏡花『天守物語』と魔界の水脈」のお話がありました。『天守物語』は1917年(大正6年)発表の戯曲で、歌舞伎・演劇・オペラ・映画など、さまざまなジャンルで取り上げられている人気の作品です。

深澤先生は泉鏡花を取り巻く文学的背景について説明してくださり、泉鏡花と柳田國男の『遠野物語』の関係に言及されました。この二人の関係を皆さんご存じでしょうか。柳田いわく「生涯懇意にした友人の一人」(柳田國男「故郷七十年」昭和34年1959、神戸新聞)だったそうです。関係性に思いを馳せつつ、『天守物語』の具体的なお話を伺いました。

『天守物語』と近世の怪異伝承として、三坂春編による奇談集『老媼茶話』と作者不詳の『諸国百物語』のお話を詳しく教えていただきました。さらに、姫路城とオサカベ狐に関するお話として、西田直養『筱舎漫筆』から始まり、松浦静山『甲子夜話』、今回のポスターにも用いた鳥山石燕『今昔画図続百鬼』、そして井原西鶴の『西鶴諸国はなし』へと展開していきました。

最後は長壁神社(八天堂)をめぐる歴史・伝説・信仰について学び、御霊信仰のお話にて『天守物語』から広がった魔界の水脈は締めくくられました。大変勉強になりましたね。

 

日本文学科公開講座「夏の怪談教室―怪異と幻想の日本文学Vol.4」。涼の世界に皆さんを誘えたでしょうか。お集まりいただいた皆さん、本当にありがとうございました。

また、次の夏にお会いしましょう。