宮城学院女子大学学芸学部日本文学科では、日本文学会と共催で、作家特別対談第10弾 佐伯一麦氏 × 池上冬樹氏の一般公開特別対談を開催します。
日時 2019.1.31(木) 14:40-16:10 (14時開場)
会場 K301教室(宮城学院女子大学第二講義館3階)
学科、学年はもちろん、学内、学外問いません。一般の方も大歓迎です。事前申し込みも必要ございませんので、直接会場にお越しください。また、駐車場には限りがございますので、学外からお越しくださる際は公共交通機関をご利用ください。
同時に、関連イベントとして
宮城学院女子大学図書館 × 日本文学科
特設展示「佐伯一麦の世界」 1.7(月)-1.31(木) 第一閲覧室
宮城学院生協 × 日本文学科
「佐伯一麦ブックフェア」 1月中旬より
宮城学院女子大学日本文学会 × 日本文学科
特設展示「佐伯一麦を読む」 1月中旬より 日本文学科図書室 *日文生限定
も開催します。こちらにも足をお運びください。
作家特別対談は、毎回、大勢の方々にお越しいただいております。どうぞご家族、ご友人お誘いあわせのうえ、宮城学院においでください。当日ですが、佐伯一麦さんのサイン会も開催予定です。ご期待ください。
お問合せ先:日本文学科副手室(022-277-6121)
▼佐伯一麦(さえき かずみ)氏
1959年、宮城県仙台市生まれ。仙台第一高卒。上京して雑誌記者や電気工など様々な職業に就きながら、84年「木を接ぐ」で「海燕」新人文学賞を受賞しデビューする。90年『ショート・サーキット』で野間文芸新人賞、91年『ア・ルース・ボーイ』で三島由紀夫賞を受賞し、若き私小説作家として注目を集める。以後、97年『遠き山に日は落ちて』で木山捷平賞、2004年『鉄塔家族』で大佛次郎賞、07年『ノルゲ Norge 』で野間文芸賞、2014年『還れぬ家』で毎日芸術賞、『渡良瀬』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。いまや押しも押されもせぬ日本の純文学を代表する作家であり、木山捷平賞、大佛次郎賞、毎日出版文化賞、やまなし文学賞などの選考委員をつとめている。2018年より朝日新聞書評委員。
******池上冬樹先生より******
作家トークショーも10回目となりました。唯川恵、穂村弘、中村文則、角田光代、東山彰良、村田沙耶香、小池昌代、三浦しをん、平松洋子ときて、10回目の節目に佐伯一麦さんをお招きすることにしました。10回目にふさわしい、純文学の重鎮です。受賞歴をみてもわかるかと思いますが、とても評価が高く、もう巨匠といっていいかもしれません。
佐伯一麦は「私小説を生きる作家」といわれ、彼自身の人生が作品に色濃く反映されています。でも、“私小説を生きる”といっても、決して一人称の「私」で語られる声高な苦悩ではなく、むしろ「私」では充分に捉えられない局面を確認するかのように、作者はときに三人称一視点、または三人称多視点(たとえば『鉄塔家族』のような群像劇)を使って、濃やかな人生の多様さを際立たせてきました。
といっても、佐伯一麦の小説では何か大きな事件や出来事が起こるわけではありません。むしろ人々の日常生活を丁寧に追うだけなのに、読者は惹きつけられ、ときに溜め息をつき、ゆっくりとした時間の流れに身を置いて、読みふけってしまう。無事に思える日々の暮らしのなかでも生起する感情の揺れ、つまり喜びと哀しみと苦しみがあやなす日々の暮らしの危うさを、佐伯一麦は玄妙に掬いあげてみせてくれるのです。
そうはいっても、佐伯一麦の小説は私小説ですから、こう思う人も多いでしょう。“いったい作家の生活を記録した作品に何の意味があるのか?”と。しかし佐伯一麦が描く慎ましやかな日々の移ろいのなかには普遍性があり、作家が体験したひとつひとつの事実のなかには、読者にとって真実と思えるものがあるのです。佐伯一麦はよく草花や木や鳥などの自然に目をとめますが、風景と感応しながら生きることの豊かさ、「時間」を着実に内面に刻み込んで生きることの歓びが優しく描かれてあり、いつも新たな発見や深い視座を与えてくれます。一言でいうなら、限りなく懐かしく、自らの日常生活をいとおしく感じさせる小説たちなのです。しみじみとした実にいい小説ばかりです。
小説ばかりではなく、『散歩歳時記』などの随筆集も、『からっぽを充たす』などの書評集も、『麦の日記帖』などの日記文学も、読むたびに(読み返すたびに)教えられることが多く、新鮮な気持ちを抱かせてくれます。再読・再々読がいっそう愉しくなる作品ばかりです。ぜひ1月31日、宮城学院女子大学においでください。(池上冬樹)