6/29開催 平松洋子氏(エッセイスト)×池上冬樹氏(文芸評論家) 一般公開 作家特別対談

hiramatsu

宮城学院女子大学学芸学部日本文学科では、日本文学会と共催で、作家特別対談第9弾 平松洋子氏(エッセイスト) × 池上冬樹氏(文芸評論家)の一般公開特別対談を開催します。

日時 2018.6.29(金) 16:20-17:50 (16時開場)

会場 C201教室(宮城学院女子大学講義館2階)

学科、学年はもちろん、学内、学外問いません。一般の方も大歓迎です。事前申し込みも必要ございませんので、直接会場にお越しください。また、駐車場には限りがございますので、学外からお越しくださる際は公共交通機関をご利用ください。

同時に、関連イベントとして

宮城学院女子大学図書館×日本文学科
特設展示「平松洋子の世界」
5月28日(月)-6月29日(金)  第一閲覧室

宮城学院生協×日本文学科
「平松洋子ブックフェア」
6月中旬より 書籍コーナー

宮城学院女子大学日本文学会×日本文学科
特設展示「平松洋子を読む」
6月上旬より 日本文学科図書室 *日文生限定

も開催します。こちらにも足をお運びください。

作家特別対談は、毎回、大勢の方々にお越しいただいております。どうぞご家族、ご友人お誘いあわせのうえ、宮城学院においでください。当日ですが、平松洋子さんのサイン会も開催予定です。ご期待ください。

お問合せ先:日本文学科副手室(022-277-6121)

▼平松洋子(ひらまつ・ようこ)氏

1958年、岡山県倉敷市生まれ。東京女子大学文理学部社会学科卒業。エッセイスト。
世界各地を取材し、食文化と暮らし、文芸と作家をテーマに執筆活動を長年行なっている。2006年『買えない味』で山田詠美の選考により第16回Bunkamuraドゥマゴ文学賞、2012年『野蛮な読書』で第28回講談社エッセイ賞をそれぞれ受賞。各紙誌に連載しているほかに著作として『夜中にジャムを煮る』『平松洋子の台所』『なつかしいひと』『忙しい日でも、おなかは空く。』『サンドウィッチは銀座で』『ひさしぶりの海苔弁』『本の花』『日本のすごい味』など著作多数。

撮影:牧田健太郎氏

 

 

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「平松洋子は美味しい」 

平松洋子のエッセイは美味しい。毎回のように食べ物が出てきて、食べることがテーマとなり、それが何とも美味しそうに描かれてあるのだが(描かれたものすべてを食べたくなる)、しかしいちばんの美味しさは文章にある。

食に関する随筆というと、檀一雄、吉田健一、立原正秋、開高健などが思い出されるけれど、喚起力に富むリズミカルで滑らかな文章は、すでに彼らに伍しているといっていいだろう。檀一雄の愛嬌、吉田健一の官能、立原正秋のキレ、開高健の五感に富む知識をそなえているのだが、題材の広さを云々するなら、彼らを超えているといえるかもしれない。

古今東西の食の文学を渉猟した山田詠美はいう。食に関する文章は溢れかえっているが、ほとんど“品がない。味がない。風味がない”。“何よりも問題なのは、食を共有する人々の姿が見えて来ない”。しかし平松洋子の文章には“品がある。味がある。風味がある。人が見える。そして、何よりも特筆すべきは「色」がある”(第16回Bunkamuraドゥマゴ文学賞選評より。受賞作は平松洋子の『買えない味』)。

詩人伊藤比呂美は、文学になぞらえて、こう称賛する。平松洋子のエッセイには小説を読んだときと同じ“緊張を、昂揚を、そして逸脱を”感じる。“言葉の力をめいっぱいに働かせ、人間のいとなみを、人間とは何かということを、掘り下げずにはいられない”力があるからだと(平松洋子『肉まんを新大阪で』文春文庫の解説より)。

そのほか中島京子、よしもとばなな、梨木香歩ほか多数の作家・評論家が平松洋子の業績を絶賛しているが(各文庫解説参照)、忘れてならないのは、食エッセイ以外の二冊、『野蛮な読書』と小川洋子との共著『洋子さんの本棚』(ともに集英社文庫)だろう。

前者は、記憶の赴くままに本が本をよぶスタイルで語られる103冊の記録。“ころころと本がころがりながら連鎖していき、「記憶の編み物」となる”(嵐山光三郎)読書エッセイであるが、これほど大胆で、濃密で、挑戦的で、繊細な書物は読んだことがない。圧倒的な傑作である(第28回講談社エッセイ賞受賞)。

後者は、対談形式の読書談義の形を借りて、親と子、女、性、老いなどを縦横に論じながら、人生の様々な局面を読みほどいていく。いつか必ず再読、再々読をしたくなるような愉しさと新たな発見を秘めた対話集であり、その懐は実に深い。

そう、平松洋子は深いのだ。美味しくて、深いのである。読めば一冊では終わらず、次々に読破していくことになるだろう。ぜひ、美味しくて深い、平松洋子の世界にふれてほしいものだ。6月29日、宮城学院女子大学に来ていただけたらと思う。(池上冬樹)