日本文学科は日本文学会と共催で、作家特別対談第五弾 東山彰良氏(直木賞作家) × 池上冬樹氏(文芸評論家・本学非常勤講師)の一般公開特別対談を開催します。
日時 2016年6月30日(木) 14:40-16:10 (開場14:00)
会場 宮城学院女子大学 礼拝堂
学科、学年はもちろん、学内、学外問いません。一般の方も大歓迎です。事前申し込みも必要ございませんので、直接会場にお越しください。また、駐車場には限りがございますので、学外からお越しくださる際は公共交通機関をご利用ください。
同時に、関連イベントとして
宮城学院女子大学図書館×日本文学科
特設展示「東山彰良の世界」
6月6日(月)-7月1日(金) 第一閲覧室
宮城学院生協×日本文学科
「東山彰良ブックフェア」
6月中 書籍コーナー
宮城学院女子大学日本文学会×日本文学科
特設展示「東山彰良を読みつくす!」
6月6日(月)-7月1日(金) 日本文学科図書室
*日文生限定
宮城学院女子大学日本文学科副手室
個人企画「東山さんの世界」
6月6日(月)-7月30日(土) 日本文学科副手室(C303)
も開催します。こちらにも足をお運びください。
当日は、東山さんによるサイン会も予定しています。ご期待ください。多くの皆さまのご来場をお待ちしております。
お問合せ先:日本文学科副手室(022-277-6121)
【東山彰良氏プロフィール】
▼東山彰良(ひがしやま・あきら)氏
1968年、台湾生まれ。5歳まで台北で過ごした後、9歳の時に日本へ移る。
2002年、犯罪小説『タード・オン・ザ・ラン』で第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞を受賞。翌年、同作を改題した『逃亡作法 TURD ON THE RUN』でデビュー。09年、青春ロードノベル『路傍』で第11回大藪春彦賞受賞。13年、文明滅亡後の世界を描いた『ブラックライダー』が「このミステリーがすごい!2014」で第3位、第5回「ANXミステリー闘うベストテン」で第1位となる。
15年、中国を舞台にした青春小説『流』で第153回直木賞を受賞。「素晴らしい読書体験」(東野圭吾)「これほどエンターテイメント“どまん中”の小説は久しぶり」(林真理子)「全てにおいて飛び抜けた傑作」(宮部みゆき)ほか選考委員全員が圧倒的賛辞を送った傑作で、歴代の直木賞受賞作のベスト1の声が高い。
犯罪小説、音楽小説、SF、ラブコメほか作風も幅広く、ジャンル横断の優れて知的な世界を構築している。近年もっとも注目されている現代小説の鬼才だ。福岡県在住。
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今回の対談に寄せて、聞き役を務める池上冬樹先生よりメッセージを頂戴しております。
東山彰良は、「このミステリーがすごい!」大賞でデビューしましたが、ミステリ作家ではなく、いまやエンターテインメントや純文学の垣根を越えた現代小説の作家というべきでしょう。犯罪小説の巨匠エルモア・レナードの作品に触発されて書きはじめ、途中から現代文学の巨匠チャールズ・ブコウスキーに影響をうけて、東山文学の奥行きが深くなりました。つまり、東山彰良は決して単純なミステリも、単純な青春小説も、単純な恋愛小説も書かないのです。幾重にも文脈を重ねて、複雑で深い小説に仕立てます。
それはたとえば、直木賞を受賞した『流』がそうです。祖父殺しの謎を解くミステリの要素をもちつつも、少年が喧嘩にあけくれる躍動感にみちた青春小説、幼なじみの少女と過去のある女性二人とのリリカルな恋愛小説、台湾人の波乱に富む家族小説、さらに戦争の悲劇を捉えた反戦小説としても読ませる。だから「小説を読む幸福を久々に味わった」(直木賞選考委員・高村薫)となり、「活き活きとした表現力、力強い文章、骨太のストーリーテリング、〈人生・青春・家族の滑稽と悲惨〉を把握して全編に漂うユーモア、全てにおいて飛び抜けた傑作」(同・宮部みゆき)と絶賛されたわけです。
また、忘れてならないのは、東山作品にあふれる詩情です。直木賞選評の北方謙三の言葉を引用するなら、混沌から“青春の情念を真珠のひと粒のようにつまみ”出しているのです。大藪春彦賞を受賞したロードノベル『路傍』がそうですが、どんなに賑々しく戯画化されたキャラクターたちが競演しても、脱力する俗悪な挿話の数々が披瀝されても、クレージーな笑いにつつまれたオフビートな展開が続いても、青春の情念が真珠の一粒のようにつまみ出されます。箴言をきらめかせ(東山文学には至るところに箴言がある)、徹底的に俗悪と戯れつつも、青春の荒野を切り開いていくのです。
その過程で音楽を聞く人もいるでしょう。東山彰良の小説には、破調のブルースが深く鳴り響いています。捩じれ、もんどりうっているような生活の中で凝視される、人生と、社会と、この世のありよう。どこにもやりばのない感情が点綴されていき、それがやがて歌になり、人物という楽器が葛藤という音を響かせて、人生の哀感というメロディを明瞭に浮かびあがらせ、読者の心を震わせるのです。
東山彰良を読んでください。小説を読む幸福を味わってください。昨年お招きした中村文則さんと同じく、世界標準の文学を書いているといっていいと思います。ぜひ6月30日のトークショーにおいでください!
■東山彰良箴言集。(池上冬樹先生より)
「出会いは孤独の結果であり、孤独の原因だと思う。新しい出会いが孤独を忘れさせてくれる。でも、孤独はけっしていなくなったりしない」(『さよなら的レボリューション』より)
「人というものはおなじものを見て、おなじものを聞いても、まったくちがう理由で笑ったり、泣いたり、怒ったりするものだが、悲しみだけは、霧のなかでチカチカとともる灯台の光みたいに、いつもそこにあっておれたちが座礁しないように導いてくれるんだ」(『流』より)
「人生って思わせぶりな男みたいだ。期待させるだけさせといて、今日を生き長らえさせる。愛なんかどこにもない。いままでだってなかったし、これからだって。そして、世界は臆病者だらけの競技場と化す」(『ミスター・グッド・ドクターをさがして』より)
「人生のつぎの扉を開けてくれるのは、いつだって馬鹿馬鹿しい偶然、ささいなズレ、話にならない勘違いだ。そこに気づかないかぎり、いくらさすらっても救われやしない。」(『ささいな痛み』より)
「人生はタクシーに乗っているようなもので、ぜんぜん進まなくたって金だけはかかる。ただじっとすわっているだけで、一分一秒ごとにメーターはどんどん跳ね上がっていく」(『路傍』より)
「動かなくてはならない時期というのがある。動け。/いま動かなければ、ゆるやかに空回りする人生から永遠にぬけ出せなくなってしまう。(動けば)勇気も憧れも、そしてあせりでさえも少しずつ幸せへと変わっていく」(『さよなら的レボリューション』より)
「世界はあたしたちが想像するよりもずっとたくさんの目的に満ちている」(『ファミリー・レストラン』より)
「書け。/才能なんか関係ない。/書け。」(『ありきたりの痛み』より)