学生の海外滞在記が届きました

国際交流センターでは、海外で活動する本学学生の安全な渡航と活動を支援しています。

今回は、ドイツに滞在している本学卒業生から届いたお便りをご紹介します。

海外大学院(ベルリン自由大学大学院)修了奮闘記

 

はじめまして、私は2015年度に宮城学院女子大学の国際文化学科を卒業しました、 岩川咲也と申します。宮城学院を卒業してからドイツに渡り、日本留学生支援機構の「海外留学支援制度(大学院学位取得型)」に応募し、書類審査と面接審査を経て幸いにも奨学金をいただくことができました。ドイツではベルリン自由大学の大学院で社会学を学びました。そのドイツ留学が無事に終了して半年が経った今、この場を借りて、ここまでの道のりを少し振り返ってみようと思います。

ヨーロッパで社会学を学びたいと考え始めたきっかけは、本学の派遣制度を利用した大学三年生の後期半年間のイギリス留学です。私が留学することになった宮城学院の提携校であるリーズ大学には国際文化学科がありません。代わりに社会学科の学生として、イギリス人の新入生と一緒に社会学入門の授業を取っていました。そこで社会学の学際的な特質と社会の常識に疑問を抱いてなぜそれが社会の常識なのか分析するというスタイルを知って、「社会学って面白い」と思いました。それから、留学している間、日 本社会と比べてイギリス社会には移民が多くいることを目で見て知りました。イギリス留学が終わって日本に帰って、日本にいる移民が少数であれども確実に増えていることに気がつくようになり、これから外国から日本に移住する人がもっと増えた時に日本社会はどう対応していくべきなのか研究したいと考えるようになりました。また、ヨーロッパの国々は様々な形で移民を受け入れてきたため、その 問いに答えるための良い研究対象だと思いました。

ドイツ以外のヨーロッパの国でも社会学を学べる修士課程を探しましたが、当時のドイツのシリア難民受け入れに対する積極的な態度が印象に残ったこと、英語中心で学べる修士課程に入りながらドイツ語も新しく学べること、イギリス留学中にできたドイツ人の友人たちのおかげで親近感があったことから、ベルリン自由大学の大学院に願書を送ることにしました。奨学金無しでは成し得ない留学でしたし、そもそも希望する大学院に入れるかも全くわからないところからの出発でしたが、宮城学院の先生方と事務の方の全面サポートのおかげで、なんとか入学が決まったのでした 。

ベルリンでの修士課程が始まってからは、慣れない社会学の授業と大量のリーディングの宿題についていくことがまず課題でした。クラスメイトは社会学を学部で学んできている人が多く、社会学のしっかりとした土台がなかった私は同じリーディ ングをするにも他の人より時間がかかっていたと思います。統計を使った研究方法 も一から学ぶことになり、授業のスライドに数学の記号が並んでいるのをみて頭が真っ白になったこともありましたが、時間をかけてクラスメイトと話し合いながら勉強したら統計のテストまでにはなんとか重要な部分を理解することができました。時間がかかる一方で新しい知識を吸収するのはとても楽しかったです。第2学期からは追加でドイツ語の授業を取る余裕も出てきて、勉強と友人との交流で埋まった忙しい日々を過ごしました。

イギリス留学中に気がついて、ドイツ留学中に私にとって深刻になった問題があります。それは、学校でも、ドイツ人の友人と会っていても、思ったように自分の意見が言えないということです。日本人とドイツ人は一般的に時間に厳しいとか、ルールを守るといったような似ている部分がありますが、私が決定的に違うと感じる部分もあります。それは、ドイツでは「自分自身の意見を持っていて、それを表現することが評価される」という点です。同意しても、共感していてもあまり個人として認めてもらえない、とまで言っても過言ではないかもしれません。私の意見を持っていて、それを表現する言語スキルがあったとしても、自己表現を子供の頃からみっちり鍛えられてきたドイツ人たちの中ではどうしても埋もれてしまい、そうすると( 本当のところはどうかわかりませんが)「静かな日本人」というラベルを貼られている気がして、実現したい自分とのギャップに落ち込んでしまうことが少なからずありました。 少しずつ勇気を出して、今では前よりも自分の意見を言う機会を増やせたと思います。さらにこれは、日本的な文化の中で育った私が、どうして同意や共感をむしろ大事にしてきたのか考えるきっかけにもなりました。これからは自己表現のスキルをさらに磨くことで 、必要であれば衝突を恐れずに議論できる、両方の文化のハイブリットを目指していきたいと思っています。

修士論文を去年の11月に日本で書き終えて、現在はまたベルリンに戻りこちらで 就職活動をしています。将来は多文化共生について学んだことを活かして、職務経験を積んだのちJPO制度を利用して国際移住機関(IOM)で働くことが現時点での目標です。

最後に、この留学を通してお世話になった人たちに感謝を述べたいと思います。 ドイツにいる友人たち、日本にいる家族と友人たち、宮城学院の先生方、特に国際交流センターの手厚いサポートなしには、こんなに楽しくて中身の詰まった留学はできませんでした。ありがとうございました。