国際文化学科教授 姚国利

みなさんこんにちは。国際文化学科の姚国利です。

 姚は「よう」と読みます。私は中国から来ました。日本での生活は20年になります。専門は経済学で、大学では「国際経済論」、「東アジアの文化と社会」、「海外実習」などの科目を担当しています。中でも特に「海外実習」という科目が楽しいと思います。下の写真は中国実習のときに撮ったものです。

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 これは「万里の長城」を見学したときの集合写真です。写真の中の学生たちの表情を見れば、海外実習の楽しさが想像できるでしょう。「万里の長城」は中国を代表する最大級の文化遺産です。「万里の長城」は農耕文明を持つ漢民族が、モンゴル草原で暮らしていた遊牧民族の侵略を防ぐために紀元前7世紀の春秋時代から明代まで、約2000年以上に渡り造成を重ねてきました。現存するものの大部分は、明代の建造で、総延長約6000キロの世界最大城壁で、衛星写真でもはっきりと見ることができます。
 「万里の長城」は民族間および文明間の戦争の遺産です。もちろん、今日において「万里の長城」本来の役割はなくなりました。しかし、戦争と衝突が絶えず続いている今の人類社会にとって、「万里の長城」はよい歴史教科書といえるかもしれません。
 外国の文化、社会事情などを知るには、様々な方法があります。教室での勉強は当然重要ですが、「百聞は一見にしかず」。教室で教えられたことを現地で自分の目で確認できれば、もっと深く理解できるでしょう。

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 2枚目は海外実習のときの食事の様子です。中身は日本食(和食)です。この日の食事を和食に決めた理由の一つは、日本文化の海外進出について調査するためです。近年、健康的であるとか、おいしさや見た目の美しさといった理由から、日本食が世界的なブームとなっています。海外における日本食レストランは2008年にすでに2万店を超えました。また、日本の農産物はアジアを中心として海外に輸出されています。東北地方産のりんご、桃、柿は中国、台湾、香港で人気が高く、売れ行きがいいです。宮城県産のお米も中国などの国で高く評価され、現地の消費者に求められています。
 グローバル化となった今の時代、外国の文化を受け入れる一方、日本文化はどれぐらい海外に進出しているのか、現地での観察は意味深いです。

 私は、教育だけでなく、私自身の研究活動としてもフィールドワークを大事にしています。自分で見たもの、自分で経験したもの、自分で直接に確認したものを常に学生に伝えたいです。

 3枚目の写真は私が現地調査したとき撮ったものです。老朽化が進んでいるこの小さな平屋には実は大きな歴史があります。この平屋で実際に日露戦争の停戦条約が締結されました。百年以上の歳月が経ちましたが、この小さな平屋は昔のまま保存されています。現場に行って、歴史の重みを強く感じました。

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外の世界に好奇心と興味を持たない若者はいない、と言っても過言ではないでしょう。若いうちにより広い世界を体験できれば、視野の広い価値観を持つことができるでしょう。中国文学において、人生の若い時代はよく花のような美しいものと喩えられます。中国の格言の中には「花有重開日、人無再少年」という一句があります。日本語に訳せば、「花には重ねて開く日が有(あ)るが、人は再び少年(わかもの)になることがない」となります。これは中国古典文学『元曲』の中の一句です。確かに、ほとんどの花は春になると開き、その美しい姿を再現します。しかし、人間は少年・少女、青年、中年…と老いていくのです。これは誰にも左右できない自然界の法則です。
 私がこの格言を覚えたのは中学校時代でしたが、その深い意味を味わえるようになったのは最近のことです。中年になった私はここ数年バドミントンに夢中で、練習も楽しくやっています。しかし、いくら猛訓練しても、どうも進歩が遅いのです。それは、若いうちに基本をよく身に付けなかったからでしょう。実際、スポーツだけでなく、外国語など多くの技能や知識は、若いうちにしっかり勉強しておかなければ後で難しい、という場合が多いでしょう。

 

 皆さん、好奇心旺盛の学生時代に世界を舞台とするフィールドワークにチャレンジしてみませんか。