教員のリレーエッセイ:食品栄養学科 准教授 濟渡久美

みなさん、こんにちは。食品栄養学科の濟渡(さいと)久美です。私は、宮城県学校栄養士、高齢者福祉施設の管理栄養士を経て、現在は本学の調理学分野を担当しています。

管理栄養士の仕事の一つとして、対象者に適切なエネルギー・栄養素量を備えた食事提供がありますが、それは全量食べて初めて意味のあるものになり、おいしい食事であることが大切です。

おいしさは、食べ物の中だけにあるのではなく、食べる人の脳が感じるものといわれています。おいしい食事づくりのためには、食材成分が調理過程でどのように変化するかを理解すること、対象者の状況を配慮して、限られた条件下で「幸せな食べ方」の提案をしていく力が必要と思っています。

「幸せな食べ方」とは、高齢者施設で勤務する中で、常に自分に問いかけていた言葉です。食べる機能が低下すると、誤嚥(ごえん:食物が食道だけでなく気管にも送り込まれること)によって誤嚥性肺炎を発症する可能性が出てきます。

これを防ぐために、食事をミキサーにかけペースト状にするなど種々の食形態で対応していました。すると「同じ食感で飽きておいしくない」や「見た目で何かわからないから食べたくない」という声が上がりました。そこで、「幸せな食べ方とは、誤嚥のリスクが高まっても、普通の食事に近いものを食べ、“今”おいしいと感じることだろうか、それとも誤嚥を防ぐことを理解して安全に食べることだろうか」の押し問答が私の脳内でぐるぐる駆け巡りました。(写真:ペースト食を食べていた実父)

この繰り返しから、どちらも取り入れた「安全でおいしい食事提供」の挑戦を始め、現在の研究「食べる機能に適した食事調製」につながっています。

ゼミ活動では、誤嚥に対して安全な食事に加えて、食べる機能の育成と高齢期のフレイル(虚弱)予防の取り組みとして、咀嚼力維持・向上のための食事づくりを行っています。(写真:介護予防料理教室の様子)

 

みなさんも幸せな食べ方を一緒に考えてみませんか?

 

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(写真上:小学生向けのサマーカレッジにて学生による食事提供の様子)

(写真上:大学後援会総会にて提供されたお弁当と役員会でプレゼンする学生)