教員のリレーエッセイ:一般教育部 准教授 川口かしみ

皆さんこんにちは。一般教育部の川口です。専門は、憲法学で、特にジェンダー平等を研究しています。宮城学院女子大学では、日本国憲法、女性と人権などの授業を担当しています。

高校生の皆さんは、18歳になった人もまだなっていない人もいると思います。皆さんもご存知の通り、日本では2016年に改正公職選挙法が施行され、選挙権の年齢が20歳から18歳に引き下げられました。選挙権が18歳に引き下げられた目的には、若者の皆さんの多くの声を政治に反映させることがあげられています。

日本国憲法では、国民主権を基本原理の1つとして掲げ、国民の権利として選挙権を規定しています。私たちが、自分たちの生活をよくするために、「このような社会になればよい」、「このような政策が欲しい」などと思ったとします。その私たちの意見を政治に届ける代表者(議員)を選ぶという意味で、国民は間接的に政治に参加することになります。

現在では、選挙権が当然のように国民に与えられていますが、その権利獲得のためには、先人たちの闘いがありました。ここでは、女性参政権に焦点を当てます。

戦後、1945年に20歳以上の男女が選挙権を獲得して、翌年の衆議院議員総選挙では女性も投票することができるようになりました。

その背景には、マッカーサーの五大改革指令のなかに「参政権付与による婦人の解放」が入っていたことも挙げられますが、市川房枝らの「新婦人同盟」(後に「日本婦人有権者同盟」と改称)の結成などによる女性参政権運動があります。

この市川らの運動より前にも、実は、女性の参政権を求めた先駆的な活動がありました。それは、明治時代の楠瀬喜多の活動です。楠瀬は高知県区会議員の選挙で投票をしようとしたら、女性であることを理由に投票を拒否されました。そこで、夫を早く亡くした楠瀬は、戸主として納税をしているにも関わらずに、女性であることから男性の戸主と同様に選挙権がないのはおかしいと声をあげました。これが、日本で最初の女性参政権を求めた運動だといわれています。(写真は楠瀬喜多)

 

このように、選挙権は先人たちの闘いを通して獲得されたものであり、最初から当然に与えられたものではありません。たしかに、選挙で投票するかしないかは個人の自由かもしれません。しかし、選挙を通じて、私たち国民が声をあげていかなければ、私たちが必要とする政策などが反映されません。そのため、選挙で投票することは、私たちにとって自分自身の生活をよくするために重要なことなのではないでしょうか。

 

川口かしみ 准教授(一般教育部)の教員紹介ページはこちら