教員のリレーエッセイ:心理行動科学科 准教授 森 康浩

皆さん、こんにちは。心理行動科学科の森康浩です。
環境社会心理学が専門で学科では社会心理学のゼミを担当しております。

社会心理学では複数人がいる社会的状況での人々の心理や行動の傾向に焦点が向けられています。特に環境問題といった社会的に望ましくない社会現象に対して、行動変容をもたらす働きかけを行なって、改善する糸口を見出そうとしています。

ここ数年は、河川付近でのポイ捨てを抑制することを対象に研究を行っています。
なぜ河川付近のポイ捨てかというと、近年様々なところで議論に及んでいる海ごみの問題を解決するためです。2050年には魚の数よりもごみの数が多くなるという試算が出ているくらい、問題は深刻です。このような海ごみが、どこから来ているか調べたところほとんどが陸域から来ているということがわかったのです。そのため、水が流れている所の近く例えば、河川付近でのポイ捨てを抑制することが必要になるんです。

海と日本PROJECT in 山形」の活動の一環として、山形県の鶴岡市を流れる川の周辺でポイ捨てを抑制するための働きかけを実施しました。3年に渡ってポイ捨てを減らす取り組みを行いましたが、1年は普段どのくらいごみがポイ捨てされているのか測定して、2年目では、対象とする河川付近を憩いの場として認識してもらうためにベンチやごみが河川へ流入することを防ぐために期間限定でごみ箱を設置し、ポイ捨てをしにくい状況をつくりました。

 

その結果多くのごみが減りましたが、郊外のスーパーで割引された総菜などが一つの袋にまとめられた「まとめごみ」が多くポイ捨てされる状態が続いていました。そこで、夕方以降も効果がありそうな人感センサー付の照明を使ってポイ捨てを抑制することを3年目に実施しました。それによって、さらにごみが減ることが確認できました

02_w600

 

 

 

 

 

 

 

普段、ポイ捨てを抑制するために、「禁止」や「犯罪です」といった否定的な内容の表示を設置したりしますが、心理学的に考えるとあまり効果がありません。今回鶴岡で行ったような対象とする社会的に望ましくない行動が行いづらい環境を構築することが抑制するために効果があります。

 

自分のゼミでは社会をよくするために、どのような働きかけをすることでよい社会的状況を作ることができるのかを学ぶことができます。

 

心理学を学ぶいいところは、人の特徴を理解することで、自分の周辺で起こっていることを一歩引いて客観的に捉えることができて、どのように対処することができるかを落ち着いて考えることができるようになることがその一つだと思います。

 

社会をよくするためにどのような方法が有効か解き明かしていきましょう!!

 

森康浩 准教授(心理行動科学科)の教員紹介ページはこちら