児童教育学科教授 狩野克彦

皆さんこんにちは、「児童教育学科」で理科教育を担当している狩野です。

 本学のキャンパスの中に「自然遊歩道」が設置されているのをご存じでしょうか。遊歩道は校舎の東側にある「丸太沢の池」の縁に沿って整備されています。その自然林は、昔仙台がまだ小さな町だったころ、町を取り囲むようにあった里山の自然をそっくりそのまま保存しています。私は仙台生まれの仙台育ちですが、子どもの頃おにぎりをもって近郊の野山に冒険に行った情景を彷彿とさせます。樹齢数百年近いモミノ木やカヤの木などの針葉樹や、コナラ、ホウの木などの広葉樹が生い茂っています。

 遊歩道の両側には四季折々に季節の花が咲きます。4月にはカタクリの花の群生、そして、様々な色や形で咲き誇っているスミレの仲間たち。5月になるとヒメシャガの群生が見事です。

 4月から8月の間に遊歩道で確認された草花を列記すると、
 カタクリ、タチボスミレ、エイザンスミレ、ヤマルリソウ、マムシグサ、チゴユリ、フデリンドウ、マイヅルソウ、ヒメシャガ、エンレイソウ、マルバダケブキ、バイカツツヂ、ツチアケビ、オカトラノオ、ジャノヒゲ、ヤマジノホトトギス、ノアザミ、ヤブラン、コバギボシ、ヘクソカズラ、ツルリンドウ…などなど。

dsc_0185m中にはとても珍しい植物もありました。それは「ツチアケビ」という腐生植物です。腐生植物とは、自分では葉緑素をもっていないので、枯れ木などから養分をもらう植物です。私自身初めて実物を見ました。5月の中旬に「遊歩道」に入ったとき、見慣れぬ茶色の茎と小さな花芽だけの植物を発見し、なんだろうと思い、すぐ研究室に戻り調べてみましたが、なかなか特定できずしばらく悩んでいました。そして7月初旬、その少しずつ大きくなっていた花芽が黄色い可憐な花に変身していました。花が分かれば種類の特定は簡単でした。腐生植物の「ツチアケビ」でした。なぜ「ツチアケビ」という名前なのか不思議に思いましたが、「秋口に実がなりその形が『アケビ』ににているから」と書かれていました。7月の末に観察のため遊歩道に入ったら、見事に土色の「アケビ」がなっていました(命名に納得)。

 

そのほかに、いろん小動物たちも顔を見せてくれます。一つだけ秘密を教えますが、雨の降った翌日、「丸太沢の池」に突き出た出島のところに行くと(できるだけ足音を立てずに)、並んで甲羅干しをしているスッポン(亀?)のファミリーに出会えます。それから冬には白鳥が30羽ぐらい飛来します。もしかすると、キャンパスに白鳥が飛来するのは本学だけかもしれません。

 私は「理科教育とはなんぞや」ということを考える「理科概説」を担当していますが、その講義の中で、遊歩道で名前が特定できた花をプレゼンで学生に提示します。学生たちは、その名前をほとんど答えることができません。私は学生たちに、「幼稚園や小学校は遠足や郊外学習で野山に行くチャンスが多いですよ。花の名前、聞かれて答えられないと信用なくすよ。」とやさしく(?)脅かしています。

dsc_0024mでも、今時の学生たちはなかなか忙しいようです。本当は、実際に遊歩道を歩いて直接体験するのが一番良いのですが、学生たちの服装や履き物も遊歩道に耐える状況ではありません。そこで考えたのがHPでバーチャルに体験する方法です。
 私のHP「キャンパスの四季(https://www.justmystage.com/home/kanokatu60/)」では、遊歩道にかぎらず、キャンパス内に見られる植物を中心に図鑑の形で編集してあります。興味関心のある人はどうぞ覗いて見てください。

 

宮城学院にはこんな豊かな自然が残されています。皆さんもこのキャンパスでいっしょに学んでみませんか。遊歩道を散歩するとますます自然が好きになりますよ。