生活文化デザイン学科の安田直民と申します。専門は建築の設計実務で、大学で学生に建築を教えながら、設計事務所を共同で主宰しています。今回のリレーエッセイでは、宮城学院女子大学の改修工事についてお話いたします。宮城学院女子大学の桜ヶ丘キャンパスは1980年に完成しました。1982年にはBCS賞(建築業協会賞)を受賞しており、建築的にも大変評価の高い建物です。礼拝堂、講堂、講義館などレンガを基調とした建物が並び、大きな芝生広場を中心とした空間はキリスト教主義大学の質実さと桜ヶ丘の自然がつくる美しいキャンパスです。
一方で、建設から40年が経過し、学生のライフスタイルの変化や、新しいカリキュラム、学部学科の再編等により、どうしても必要な空間が確保できていないという現実がありました。そうした中で、大学キャンパスを構成する建物の一部を改修するという計画がもちあがります。古くなった執務空間をきれいにリフォームし、あまり使われていない校舎の一部をニーズに合わせてリノベーションする計画です。具体的には、講義館の大学事務部門の改修と、あまり使われていなかった人文館の2階(芝生広場に面した場所)を学生と学生サービスの空間に作り変えるというものです。
この計画は大学で改修方針を決め、具体的な設計は私が共同主宰するSOYsource建築設計事務所が手掛けました。工事は2021年の4月からはじまり、9月に完成しています。また、本学の生活科学部生活文化デザイン学科の都市・建築デザイン研究室(安田ゼミ)の学生も計画、調査等で積極的にかかわり、改修の実現にむけて協力しました。
■講義館改修
講義館のキャリア支援課・社会連携課の執務空間を改修しました。学生の就職相談に個別に対応できるカウンターや、相談ブース、資料ゾーン、打ち合わせゾーンなど職員の皆さんの働き方や学生の相談しやすさをイメージしながら、家具や照明などを中心に改修しています。
講義館 キャリア支援課・社会連携課の執務空間(左:改修前/右:改修後)
■人文館改修
あまり使われていないロッカー室を改修し、芝生広場にむけて大きなガラス張りの空間をつくりました。学生課のサービスカウンターと学生の自習スペース、学生相談・特別支援室が移転し、すでに運用がはじまっています。スリット状の窓しかなかった暗い空間を、ピロティに光が漏れる明るい内部とガラスファサードに改修しています。内部は大学のイメージを損なわないように外部のレンガタイルとマッチする暖かい色調でまとめた空間としました。家具や天井、間仕切り、新しいトイレまできれいになった空間が、通学する学生を出迎えます。
人文館 通路(左:改修前/右:改修後)
人文館 ロッカー室(左:改修前/右:改修後)
人文館 トイレ(左:改修前/右:改修後)