教員のリレーエッセイ:一般教育部 准教授 高橋 陽一

 みなさん、はじめまして。一般教育部の高橋陽一です。今年の4月に宮城学院女子大学に着任しました。専門は歴史学で、江戸時代の旅行や仙台藩の地域社会について研究しています。担当している講義は総合コース(東北と日本)や資料講読(くずし字学習)です。
 歴史を研究する際には、過去に記された古文書こもんじょを解読します。古文書こもんじょは「くずし字」という字画を省略した独特な続け字で書かれています。いわば、「昔の日本語」です。自分には縁遠いと感じるかもしれませんが、100年ほど前までの日本人は普通にくずし字の読み書きができました。しかし今、くずし字を読める日本人はもはや「絶滅危惧種」です(写真1はくずし字で書かれた仙台近郊の地名)。

 現在、日本でくずし字の解読能力を持つ人は約5,000人といわれています。日本の市区町村の総数が約1,700ですから、各自治体に3人もいない計算です(ちなみに、英検1級の合格者数は累計で約100万人といわれています)。今、ほとんどの日本人は、100年前に同じ日本人が書いた日本語を読めません。みなさんは、この現状を知ってどのように感じますか?
 社会のグローバル化が叫ばれて久しい今日ですが、私は国際交流の基本は自国の歴史や文化をきちんと他国に伝えることにあると思います。日本の歴史や文化を学ぶためには、「昔の日本語」が読めなければなりません。くずし字の学習には時間がかかりますが、日本語ですから外国語学習ほどの労力は要しません。フィールドワークで古文書こもんじょの調査にでかけることもあります(写真2は今年8月の作並温泉岩松旅館での古文書こもんじょ調査のようす、写真3は調査で見つかった古文書こもんじょ)。昔の人の名前、山や川の呼び名、伊達政宗の手紙、読めると単純に楽しいですよ。
 みなさん、ぜひ「昔の日本語」を読めるようになってください。丸暗記学習とは異なる歴史の世界が広がることでしょう。