一般教育部でキリスト教学を担当している栗原です。私は宗教改革などドイツの宗教史・文化史を専門とする研究者ですが、宮城学院女子大学では、聖書はどのようなことを教えているのかを学ぶ「キリスト教学」、グローバル社会が抱える多様な問題(人種差別、テロ、環境破壊など)についてキリスト教は何を語りかけて来るのかを問う「キリスト教と現代社会」などを担当しております。
キリスト教というと、皆さんはどのようなイメージを持っているでしょうか。「清らかで立派そうだけど、自分には縁が無さそう」、あるいは「宗教は戦争の原因になったりするから、偽善的でうさんくさい」といった印象を持つ人も多いと思います。
しかし、キリスト教の土台である聖書を読んでみると、そこに描かれているのは、私たちと同じく弱さも悩みも抱えた生身の人間たちのドラマです。その彼らが心の中で望んでいたものは何だったのか。何が彼らの人生を変えて行ったのか。これらの物語を学ぶことによって、私たちは新しい視点からこの世界と自分自身を見つめ直し、何を人生の座標軸とすべきかを深く考えることができます。変化が激しいこの時代にあって、流行や他人の声に流されない価値観や性格を形作るには、ぜひキリスト教に触れてもらいたいです。
ところで、私は初めから歴史や神学の専門家を目指していたわけではありません。大学を卒業した頃は、児童文学作家になることを夢見ていました。残念ながら短編2つが活字になっただけで作家デビューは果たせませんでしたが、未だに児童文学には強い思い入れがあります。そこで今秋、「メルヘン、児童文学、キリスト教」(特殊研究B)という科目を開講しました。グリム童話や『ハイジ』、『赤毛のアン』、『星の王子さま』などの名作がどのようにキリスト教と共鳴しているかを探って行くのが狙いです。履修している学生たちから意外な発見が寄せられることを楽しみにしています。