英文学科では、2024年度から「外国語から見た日本語」で「日本手話 (Japanese Sign Language)」の授業を開講します。
みなさんは、日本手話を聾者が音声日本語の代わり用いるジェスチャーと考えていないでしょうか。つまり、音声日本語の文法に従ってジェスチャーや手話の単語で置き換えたものと思っていないでしょうか([1])。
しかし、日本手話が、音声言語と同様に複雑な文法体系をもった自然言語(コンピュータの人工言語とは異なる人間言語)であることが、手話言語学研究から明らかになっています。
さらに、脳科学から手話を理解するときには音声言語と同じ脳部位が関与することも明らかになっています。つまり、音声言語と手話言語の相違は、伝達手段として音声情報を用いるか視覚情報を用いるかの相違にすぎません。
ここで、英文学科なのになぜ「手話」を学ぶのかと思う人がいるかもしれません。英文学科の多くの学生は、音声日本語を母語として苦労もせずに獲得したために母語を意識化することは日常生活では滅多にないと思います。
みなさんは第二言語として英語を英文学科で深く学ぶことで、人間言語の持つ普遍性(共通点)と多様性(相違)に驚いた経験があると思います。大学で学んでいる韓国語、フランス語などの第三言語に加えて、日本手話を第四言語して学ぶことで、母語のみならず英語に対しても新しい視点を得るこができると思います。
また、日本手話を母語とする先生から直接に日本手話を学ぶことで、聾者の文化やそれに付随する側面への理解のきっかけになればと思います。
[1] 音声日本語の文法に従って手指で表現するのは「日本語対応手話」と呼ばれ、日本手話とは異なる「手指日本語 (Signed Japanese)」で、日本手話を母語とする人には理解が困難であると言われています(木村晴美(2011)『日本手話と日本語対応手話(手指日本語)−間にある「深い谷」』生活書院)