園だよりを通じた附属森のこども園との連携:8月のコラム紹介

幼児教育専攻の教員が、リレー方式で担当している附属森のこども園の園だより8月号のコラムを紹介させていただきます。8月号は、兪幜蘭(ユキョンラン)先生のコラムです。

「あと少し」を支えるまなざし

日々、1歳と3歳の子育てに向き合いながら、また、心理学を教える立場として改めて感じるのは、子どもの発達の可能性は「その子が今、少し頑張ればできそうなこと」を周囲の大人がどれだけ支えられるかにかかっているということです。

ロシアの心理学者ヴィゴツキーは、子どもが今ひとりでできることと、大人と一緒にやればできることの間にある発達領域を「発達の最近接領域(ZPD)」と呼びました。ZPDの中にいるとき、子どもは他者の支えを受けながら“あと少し”を乗り越える経験を重ね、そこがやがて「ひとりでできる」ことへと変化していきます。

この「ちょっと背伸び」ができる環境づくりは、私たち大人にとっても意識が必要です。たとえば、3歳の息子がボタンのついた服に挑戦しているとき、私は急いで手を出したくなります。でも、そこでぐっとこらえて「ここを押してごらん」と言葉で支援をする。そうすると、最初は一緒でないとできなかったことが、ある日ふと、彼ひとりでできるようになっていたりします。

こうした関わりは、きっと保護者の皆さんも日々の子育ての中で自然に実践されていることと思います。ただ、子どもが「できない」ことに目がいきやすいときこそ、「あと少しでできそうなこと」に意識を向けてみてください。それは、子どもの自己肯定感や主体性を育てる力になります。

今日の「まだ」が、明日の「できた」に変わるように。私たち大人のまなざしと環境づくりが、その一歩を支えていけたらと思います。

宮城学院女子大学 教育学部 幼児教育専攻 准教授 兪 幜蘭
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